Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第一章 人類発展の三段階  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
11  そこで突きつけられた問題は、その後、何年間かにわたって、原子爆弾をつくるうえでの土台になった大問題でしたが、それは、人間がつくりだしたこの爆発が、つくりだした者にはねかえってこないように防ぐことのできる制御手段を発見することだったのです(それが戦争の初めの幾年か一つの大きな役割を演じた“重水”の問題だったのです。しかし、これは、別の話になります)。人間は、自然に対して絶えまなく傷を押しつけながら、その代償によって、自然的条件を克服することに取り組んでいるのです。そのひどい侵略のしっぺがえしを、人間はたぶん、すでに種々うけています。人間は、工業の発達によるこうした結果について、よく考えるべきではないでしょうか? 人間は新しいエネルギー資源を引き出すことを必要としています。
 かつて、風車は風の力を利用しました。水車とタービンは、液体の流力を利用しました。自然の資源でそれらには十分だったのです。その後、工業はエネルギー資源の絶えまない拡大を必要とするようになり、それらを枯渇させるにいたります。こうして、石炭がなくなり、石油も、同じ運命にあるのです。
12  これはまだ、問題の一断面にすぎません。この資源消費によって生み出される製造工場の製品は、つねに増大する販路を見いださなければなりません。その代償として生ずるのが人間の堕落です。なぜなら、消費を増大するには、宣伝に頼って、人間の自然の好みを堕落させても、パブロフ(ソ連の生理学者)がすでに動物においてその効きめを示してみせた条件反射のシステムを応用することによって人工的な欲求をつくりだすのです。こうして、人間に欲求不満の状態をつくりだし、宣伝の、いらだたせ興奮させる効果によって、人びとが有害性の極限に達するまで消費するよう、人工的欲望をつくりだすわけです。これは、アルコールとタバコの場合がそれです。これら二つの自己破壊の手段に加えて、目まいのするような蔓延を示している麻薬があります。
 しかし、これですべてではありません。生産のために、工場はエネルギーを変形することを余儀なくされますが、この変形は二重になっています。一つは意志によって積極的になされるもので、製造のためです。もう一つは、不本意ながら不可避的に生ずる廃棄物です。それは自然界の中へ無差別に捨てられ、自然を毒しています。そして、これが私たちの直面している公害であり、現代はその恐るべき結果をうけはじめているのです。

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