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日蓮大聖人・池田大作

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親子の間の倫理  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
6  また、さらに現実的な要素としては、戦後の経済的発展が、かつてない物質的豊かさをもたらし、夫婦が作る子供の数の減少と相まって、子供たちの欲求を存分に満たすことができるようになったこと、そして、親たちの多くは、仕事の多忙のために、子供をしつけるゆとりがなくなったこと、その結果、子供が非行に走っていることに気付いても、それに対処する自信も知恵もなくなっていること等々が挙げられましょう。おそらく、これらの諸要因は、日本だけの問題ではなく、現代の先進諸国が共通に抱えているものであり、その意味で、現代の物質主義的文明の本質的欠陥が現れたものであると思います。
 そこで、そうした親子間の関係に豊潤さと本来の愛情をとりもどすには、たんに外側からの規範、道徳教育のみでは不可能であると思われます。それは究極的には人間自身の問題に帰着し、人間の内面より律動するみずみずしい生命力の蘇生、より高度な精神的開化こそが、こうした技術社会にあっても、不変の親子の間の倫理を支えるものであると思うからです。その意味で、このような身近な現代の問題について、新たな人間の能動性を生み出す源泉に宗教がなりうるかどうかが、今後、問われなければならない点であると思います。
7  (注1)
 十戒モーゼ(イスラエルの民族統一者・立法者。紀元前一五〇〇年ごろあるいは紀元前一三〇〇年ごろ)がシナイ山で神の啓示を受けて定めた律法。「我のほか何物も神とすべからず」の他、安息日、殺人・姦淫・盗み・偽証・貪欲等々の十カ条で戒めたもの(『旧約聖書』「出エジプト記」二〇)。

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