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日蓮大聖人・池田大作

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宗教の正統性を決めるもの  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
8  それに対し、仏教は、神といった絶対者の教えではなく、本来、宇宙万物を貫いている法理を覚知した仏陀の教えです。したがって、その覚知は、万人がやがて到達できる可能性をもっていますし、そこまでいたっていない人々でも、その理性によってある程度判断できるはずです。
 ですから、仏教の場合は、経典自体、神の啓示や命令という形ではなく、仏陀と弟子との対話、弟子同士の論議という形式によって書かれていますし、後に種々の問題が出てきた場合も、対立者は自分の主張を裏づける経文や論師の説、また、道理や現実の中に認められる証拠を挙げて論議し合い、それを第三者(多くの場合、権力者や良識ある俗人)が見守るという形で、勝敗が決せられたのです。第三者は、傍らで見守ったり補足質問をする程度であり、勝敗を判定したのではありません。勝敗は、答えに詰まって窮した一方の当事者が敗北を認めることによって決まったのです。
 もちろん、仏教の場合もすべてこの方式で行われ、権力や暴力によることは皆無であったというわけではありません。しかし、対立抗争の多くがこの方式によって解決されるか、あるいは少なくとも暴力的抗争は回避されてきたということはできます。
9  (注1)アタナシウス派
 アタナシウス(二九五年ごろ―三七三年)は初期キリスト教の教父。アリウス説に反対し、教会の正統的信仰を確立、その独立と権威のために努力した。「アタナシウス信条」がある。
 (注2)アリウス派
 アリウスはアレクサンドリアの司祭で、古代キリスト教の異端者とされる。キリストは唯一絶対の神によって造られたとしてキリストの神性を否定し、破門された。アタナシウス派と論争したが、その説は三二五年、ニカイア公会議で弾劾された。
 (注3)“啓示”
 カトリックでは天啓。神が自己を人間に直接的に認識させること。啓示によって伝えられるものには、人間の認識できる真理もしくは神の絶対の証明により認識が容易になるような真理もあるが、人間の悟性を超えた宗教的真理の場合もあるとされる。
 (注4)アルミニウス主義者
 宗教改革者カルヴァンの神学に反対した十七世紀オランダの神学者ヤコブ・アルミニウス(一五六〇年―一六〇九年)の教説に立った一派。アルミニウスはカルヴァンの二重予定説、すなわち、すべての人間はすでに救いか滅びかに定められており、その運命を変えるあらゆる可能性は閉ざされているとの説を否定し、これを大幅に修正。神の救いは特定の一部の人間にではなく全人類に向けられ、これを拒むのは人間の自由意志によるとした。この教説はメソジスト運動の創始者ジョン・ウェズリーに強い影響を与えた。

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