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組織と参加  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
7  池田 組織の弊害の面を最小にするためには、幹部と一般メンバーの両方が、その点についての意識をもつ必要があるとのご指摘は、私も同感です。私は、もう一歩これを突き詰めていえば、人間としての、相互の理解と尊重の精神を保つことであろうと思います。
 組織は、基本的には人間を、それぞれ組織で要求される役務の遂行者としてのみ認める傾向性をもっており、それ以外の人間的要素を排除しがちです。これは、組織が巨大化し、中央集権化するに従って強まります。
 しかし、小さい規模で自律性をもっている場合は、人間的要素は、それほど排除されません。特に、地域的に分割された小規模組織の場合、組織上の役務以外の、たとえば幼時からの生い立ちについても、たがいに知り合っていたり、組織の問題以外の共通の話題もあり、全人格的交流に近いものが、人々の間に成り立ちやすいでしょう。
 これは、外部社会との隔絶という、ともすれば宗教団体が陥りやすい弊害に対して、大きい抑止矯正の力になります。と同時に、組織上の権力を横暴に振るいがちになることに対しても、それを和らげ、人間的良識に従った生き方にしていく力になるでしょう。
 その意味で、私は、中央集権化は、必要最小限に止め、なるべく大きい分野で地方分権化を図ることが望ましいと考えていますし、創価学会においても、その方向への努力をしています。
8  ウィルソン 分権化は、たしかに、諸組織がしばしば陥る硬直化を防ぐ一つの方法かもしれません。特に、地方の指導者が、地元の一般信徒たちから活発な反応を起こすことを絶えず求められる場合が、そうです。分権化を効果あるものにするには、一般信徒の要求するものに共感をもって関与し、そうした要求を察知する資質を地方の幹部にまで普及させることが、おそらく最も大事でしょう。この方針を採るためには、地方の指導層に、組織的でありながらしかも人間味のある、さらなる献身を促すための計画が、それに付随して必要になるだろうと思われます。
 はっきりいえることは、よく組織された宗教運動だけが、そのような努力を活発に推進し、持続しうるということです。しかし、その場合でも、信徒たちを繰り返しその運動に馴染ませ、彼らに人間味を回復させようと絶えず努めることこそ、一つの宗教が常に関心を払って成就すべきものの核心であることは明らかです。
9  (注1)ヒエラルキー(位階制)
 頂点に立つ指導者から順次、下位の者に権威の分与が行われているピラミッド型の権威構造のこと。カトリックと英国国教会は位階制に基づいた教会組織が形成されている。
 (注2)新宗教運動
 一般には(ここで使われているように)発生したばかりの新しい宗教運動を意味する。新宗教は、ほとんどの社会に繰り返し生まれてきた。その教義、典礼、組織などが従来の宗教的伝統と大きく異なる場合にも、またそれが他文化から移入された宗教的概念である場合にも、“新”宗教運動と呼称される。

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