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日蓮大聖人・池田大作

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芸術と宗教  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

前後
10  人間社会に一貫した価値体系が失われるとき、何よりも芸術は、重大な影響を受けずにはいられません。そうなると、人々はかなり懐疑的な眼で芸術を見るようになりますが、だからといって、それがあながち誤りだとはいえません。そうしたことから、芸術は、宗教や思想に不当に隷属させられる可能性はたしかにあるわけですが、しかし、以上のような意味において、まとまりをもった価値意識を失えば、芸術家がまったくの個人的レベルを越えて何らかの一般的な価値を社会に伝達することが困難になる、いやそれどころか、(芸術的想像力を高めることなく)技巧を凝らすことしかできなくなる場合が、逆説的ではありますが、ありうるのです。
 現代社会はあまりにも開放的であり、あまりにも多元的であるため、「芸術と偶然は一つに収束する」などと一部の芸術家が(私にいわせれば愚にもつかず)公然と信じているような現状では、もはや技能さえも必要でないのかもしれません。
11  (注1)ルネ・ユイグ(一九〇六年―)
 フランスの美術史家。パリ大学で哲学を学び、一九二七年ルーブル美術館に入り、三七年以来、絵画担当技官として展示方法の変革、作品修復、美術館の運営に優れた才能を示した。アカデミー・フランセーズ会員。コレージュ・ド・フランスの教授、ジャックマール・アンドレ美術館館長等を歴任。ルネ・ユイグ・池田大作共著『闇は暁を求めて』(講談社)は一九八一年に発刊。

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