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日蓮大聖人・池田大作

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人間主義の最高峰を仰ぎて――現代に生き… トリブバン大学記念講演

1996.11.2 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

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18  人間、「自分」ほど大切なものはない。ゆえに、「我が身に引き当て」、「他者」を大切にすべきである――
 まことに無理のない自然な語り日のなかで、相互に「他者」の存在、相手の立場に立ち、共感することこそ慈悲の第一歩であると釈尊は説いているのであります。孤独な現代人の心の病を癒す「良薬」は、ここに求める以外にないと思うのは私だけではないでありましょう。
 釈尊は、成道してから、その法を人々に説こうか、説くまいか、大いに躊躇し、葛藤しております。説けば必ず、無理解な批判や迫害が沸き起こるであろう。
 あえて人に語らず、自分一人で、静かに法悦を味わってもよいのではないか……。
 皆さま方のほうがよくご存じと思いますが、仏伝によれば、この浚巡する釈尊の前に、梵天(ブラフマン)が現れ、「前進か後退か」「幸福か不幸か」「栄光か悲惨か」、そうした分岐点に立たされている人々のために、ぜひとも、教えを説くよう懇請したといわれております。
 この「梵天の勧請」が、釈尊の「自己」の中に「他者」を復活させ、自他ともの崩れざる幸福へと進みゆく、真の「仏」の誕生の契機となったとされているのであります。
19  「一切衆生の病むがゆえに我病む」
 釈尊の心の中には、常に、生老病死の苦悩に喘ぐ民衆の呻き声が響いておりました。時を超え、国を超え、釈尊は、こう呼びかけているのであります。
 「汝の心のうちに『他者』を復活し、自他ともの幸福を満喫せよ」と。
 ゆえに、十三世紀の日本の日蓮も、「法華経」を解釈しつつ、「自他共に智慧と慈悲と有るを喜とは云うなり」――自他ともに、智慧と慈悲をもっているのが、本当の「喜び」である――と応えているのであります。それは「第三世代の人権」、すなわち「平和な国際秩序」と「健全な地球環境」を創出しゆく「連帯権」にも通じていると、私は思うのであります。
 こうした人間主義の連帯こそが、それぞれの国に個性豊かな繁栄を築きながら、人類全体の栄光を開きゆく光源となるでありましょう。使命深き皆さま方が、大鵬おおとりのごとく、智慧と慈悲の翼を広げ、「平和と生命尊厳の二十一世紀」へ飛翔されゆくことを、私は念願し、また確信する次第であります。
20  結びに、皆さま方のこれからの人生が、「希望」と「健康」と「幸福」に包まれゆくことを心から祈りつつ、私の大好きな貴国の詩人ギミレの雄渾なる「青年よ」の一節を申し上げ、私の祝福のスピーチを終わらせていただきます。
  夜明けの光が 雪の山頂を照らし
  清新な活力が
  英雄の腕に湧き出ずる
  おお 青年よ
  その朝日の光の矢を
  君が触れることによって
  新しい波を起こしたまえ
  そして 君の指で
  世界を覚醒させたまえ
  新たな躍動の世界へと
 ご清聴、ありがとうございました。
 ダンニャバード(ありがとうございます)。
 (平成7年11月2日 ネパ―ル・カトマンズ、インタナショナル・コンベンション・センター)

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