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日蓮大聖人・池田大作

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文明の揺監から新しきシルクロードを アンカラ大学記念講演

1992.6.24 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

前後
18  今世紀フランスの優れた哲学者シモーヌ・ヴェイュは言います。
 「大革命は、フランスの王冠のもとに服していた各地域の住民を唯一つの集団に融合した。しかもそれは、国民の主権にたいする陶酔を通じておこなわれたのだ。
 強制によってフランス人であった人びとは、自由なる同意によってフランス人となった。フランス人でなかった人たちの多くが、フランス人になることをのぞんだ」(「根をもつこと」山崎庸一郎訳、『シモーヌ・ヴェーユ著作集』V所収、春秋社)と。
 当時のフランス人という言葉は、それほどに魅力的な普遍性の響きを帯びていたようであります。
 このフランス人をトルコ人と置き換えれば、彼女の文章は、そのまま、新しいトルコ及びトルコ人を創出しようとしたケマル大統領が構想したところを、鮮やかに映し出していると私は信ずるのであります。
19  ともあれ東西文明の十字路に位置してきた貴国の役割は、近年、一躍クローズアップされてきました。
 私は、それが単なる経済的な利害関係や、宗教的・民族的絆のみによるものではなく、ケマル主義が体現している普遍性、開明性にも大きく起因していると見ている一人であります。
 そうであるかぎり、流動化を強めつつある昨今の動きは、貴国の基本路線である「内に平和を、外に平和を」の大いなる前進となる。ひいては日本をも交えて「文化交流」と「相互理解」の″新たなるシルクロード″を、人々がにぎわい行き交う、夢躍る未来さえも予感させるのであります。
 その「精神のシルクロード」においては、「人間の尊厳」「自然との調和」、また「未来の世代への責任」などの価値観が、深く広く、共有されていくことは当然でありましょう。それは、環境問題をはじめとする「地球的問題群」打開への連帯にも通じていくと信ずるのであります。
 私も、世界平和への貴重な一里塚として、微力ながらそのために、全力をあげて貢献していく決心であります。
 最後に、その思いを、再びエムレの詩の一節に託し、記念のスピーチを終わらせていただきます。
20   「世界は 私の生命の支えである
  世界中の人々は 私と同じ民族なのだ」――
 ご清聴、ありがとうございました。
 (平成4年6月24日 トルコ、アンカラ大学)

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