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日蓮大聖人・池田大作

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東西文化交流の新しい道 モスクワ大学記念講演

1975.5.27 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

前後
16  政策的な意図から民族間の不和があおりたてられていた帝政ロシア時代と比するならば、まさに隔世の感すらある。革命後、ソビエト政府が最初にとった措置の一つは、皮膚の色や経済的発展度にかかわりなく、連邦内に居住するあらゆる民族の完全な同権を宣言することであったとうかがっております。また、レーニンはソビエト国家の創設にあたり「われわれは諸民族の自由意思にもとづく同盟、つまり完全な信頼と、兄弟的統一の明白な自覚と、完全に自発的な同意にもとづく同盟を望む」と語っております。
 また、帝政ロシア時代のことではありましたが、東洋学研究も、当時にあって、最も進んだものであった。更に、インドの詩聖タゴールの全作品が、あの十月革命後、短期間のうちに翻訳されている事実を考えても、ロシア人の心のうちには東洋と西洋とを結ぶ共感の懸け橋が存在していると思われてならないのであります。かつてみられた西欧派とスラブ派の対立も、実にこの間の事情に由来しているとも考えられる。
 アジアの心も、ヨーロッパの心も、そして「北」の心も、「南」の心も、ソ連には理解できるに相違ない。だからこそ、東西文化交流に、そしてまた南北文化交流に、ソ連が寄与すべき任務は多々あると、私は信じたいのであります。(拍手)
 とともに、何よりも私は、ロシアの大地にたしかに息づいている平和への希求に、最大限の敬意を表したい。かつて十三世紀からほぼ二世紀にわたって、ロシアはかの有名な「タタールのくびき」に苦しめられた。また西からは、ドイツ騎士団、スウェーデン軍などに侵略され、そして、前世紀にはナポレオンの遠征、今世紀にはヒトラーの電撃的侵攻を被ったロシアの大地――そこに生きるロシアの民衆の胸中に培われたものは、ほかでもない、いかなる圧制にも強靭にひたすら生き抜く人間としての気概と、かけがえないものとして平和を願望する純粋な心情であったといってよい。今回のソ連再訪問によって、私はこのことを以前にもまして痛感している次第です。(拍手)
17  世界市民の心と心に燦然と輝く「精神のシルクロード」を確立するために、私はあすのソビエト連邦を担う皆さん方に期待します。皆さんは、きっと平和希求、人間原点という貴重なロシアの精神的遺産を遺憾なく発揮させつつ、ソビエト連邦のより一層の発展、そしてかけがえのない永続的な世界平和の実現を担っていくことでありましょう。私ども創価学会も、皆さんとともに、今後も文化交流を民衆レベルで推進していくことをお約束します。私はその交流のために生涯、先頭に立って、誠意を尽くして、世界を駆けるでありましょう。(大拍手)
 そうした人間交流の舞台で、いつの日かまた皆さんとお会いする日を脳裏に描きつつ、私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。
 (昭和50年5月27日 モスクフ大学。文化宮殿)

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