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軍縮及び核兵器廃絶への提言 第2回国連軍縮特別総会ヘ

1982.6.5 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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17  更に軍事費でいえば、一九六〇年から八〇年にかけての二十年間に世界の軍事費は年平均約三%ずつ増え続け、八〇年には総額五千億ドルに達した。今後も年平均約二%ずつ増え続ければ、西暦二〇〇〇年の世界各国の軍事費は、総額九千三十億ドルとなります。そうなれば、民需に回るべき資源の約四五%が軍需に回ることになると同報告書は指摘しております。
 まさに、人的資源を含めた地球上の資源の浪費、これ以上のものはないといえましょう。私がここで言いたいことは、もはやこうした軍事力のみが国の安全保障になるという考え方から一日も早く脱却すべきであるということであります。私は、南北双方とも「脅威に対抗できるものは軍事力だけだ」「軍事的な力の大きさが国家の威信を高める」という既成の安全保障観を再考すべきであると思います。何よりも膨大な核戦力が対峙している以上、いかに軍事力を増強させようと、とうてい真の平和は保ちえないからです。むしろ前述したように非核地域平和保障機構を創設し、世界全体を緊張緩和、軍縮の方向に向けることこそ真の安全保障の道につながると思うのです。
 そこで、私が提案したいのは、膨大な軍事費の一部を割いて、その非核地域平和保障機構創設のための準備基金とすることです。基本的には、各地域に位置する国々が、それぞれ軍事費の一部を削減し、それに充てればよいと考えます。その額がどのくらいあれば適当かは、先に提案した「非核地域平和保障機構創出のための国連特別委員会」が検討することになりましょう。私は、日本はアジア各国に先駆けて、その準備基金の拠出にあたるべきであることを付言しておきます。
18  私は、第一回の軍縮特別総会への提言の中で、核開発をはじめとする軍備増強のための膨大な軍事費を人類の英知と繁栄のために振り向けていくための方策に言及しました。国連内に仮称「軍縮のための経済転換計画委員会」を組織化し、そこで軍縮にともなう新たな国際的経済秩序を形成する構想を検討してほしいと提言いたしました。
 私は、一九八〇年代の世界経済を展望した場合、世界的軍縮による資源の平和的利用への道を開くことが、いよいよ緊急事となっている気がしてなりません。もし、八〇年代に経済的、軍事的危機の打開のための政策転換を目指した全地球的な軍縮計画が進展するならば、南北間の所得格差が縮小するばかりか、経済力からみた各国の国力は充実し、全人類的福祉の向上と平和維持が期待できるものと確信しております。今回の第二回軍縮特別総会が、その輝ける人類社会の未来に向かって、全地球的な軍縮への第一歩を踏み出す契機となることを願ってやみません。
19  「ヒロシマ・ナガサキ展」開催を
 次に、核兵器の破壊力、核兵器配備の実態を広く世界の民衆に啓発し、核廃絶への国際世論を高めるための運動を進めることを提言したい。言うまでもなく、非核地帯の構築のためには、反核の民衆の意識の定着、深化が不可欠であり、この運動の進展が、世界の非核地帯化のカギを握っているといえましょう。
 この点に関しては、私は、第一回総会への提言の中で、幾つか具体案を示しました。それらを踏まえて、私は、まず第一に各国NGOの総力を結集し「ヒロシマ・ナガサキ展」の世界各地での開催を進めてほしい。この提案は、日本で創価学会青年平和会議が中心となり、各地で「反戦・反核展」を開催し、多くの人々に反核意識を植え付け、深化させることができた成果を踏まえての提言であります。
 更に、ヒロシマ、ナガサキの被爆の映画の各国語版のリプリントを進め、世界各地での上映運動を展開することも有効でありましょう。テレビ等のマスメディアを通じての啓蒙も、当然必要であります。
 そこで、私は、各国において核廃絶の意識を高め、国内の展示、情報提供のセンターとして機能する常設の「反核平和館」を開設してはどうかと考えます。日本では、既に私どもの試みとして、反戦、平和を訴える「戸田平和記念館」を常設し、その機能を発揮しております。
 前回の総会に際し、私は、戦争の悲惨、残酷さ、核兵器の破壊力、ヒロシマ、ナガサキの被爆の実態、現在の核兵器の状況などを示す文書、写真、映画、ビデオ、絵画、その他の資料を収集、展覧し、国連を訪れる人々に公開する、そしてそれらの資料が世界各地で活用されるよう推進するセンターとして「平和のための資料館」を国連に開設せよ、と提言しました。この仮称「国連平和館」をセンターにして、各国の「反核平和館」が機能していくならば、反戦、反核意識は大きく高揚していくと思うのです。
 以上の私の提案が、今回の軍縮特別総会を成功に導くための、ささやかな手助け、何らかの参考になれば、望外の喜びであります。第二回国連軍縮特別総会の実りある成果を、一民間人として心より期待するものであります。
 (昭和57年6月5日 「聖教新聞」掲載)

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