Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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二十一世紀への平和路線 『創大平和研究』特別寄稿

1979.2.0 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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26  ともかく、少なくとも次の点だけは明らかであろう。二十一世紀の理念は、人々の心の奥に根を下ろし、不信を信頼へ、憎悪を和解へ、分裂を融合へと向かわしむる、英知を結集する源泉でなければならない。それは上へ向かっては国家やイデオロギーを超えて世界的連帯を築きゆき、下に向かっては庶民と庶民との間に揺るがぬ信義の絆を形成していくであろう。このことは、真実の平和というものが、人類的課題であるとともに、人間一人一人に課せられた使命であることを物語っている。両々相まって、人間は、主役の座を回復させていくに違いない。
 思うにそれは、第二次宗教革命ともいうべき、壮大なる転換をもたらすであろう。かつての宗教革命は、ヨーロッパ社会に限定されており、何といっても宗教の世界の枠内で行われたものであった。たしかにそれは、一切に君臨していた絶対神を、個人の内面の座へ引き下ろしはした。しかし、その後にきたものは、個人の尊厳とは裏腹の″外なる″権威の絶対化であった。進歩信仰、制度信仰、資本信仰、科学信仰、そして核信仰――。神なき時代の神々は、近代化の波に乗って多くの爪跡を残し、今、偶像の座から滑り落ちようとしている。
27  したがって、第二次宗教革命ともいうべきものの様相も、おのずから明らかであろう。人間は、制度であれ核であれ、自ら作り出したものの奴隷となってはならない。人間が主役なのである。一個の人間の内なる変革は、その必然的波動、必然的帰結として、政治、経済、文化、教育等のあらゆる側面に価値観の転換をもたらしていく。それは、人間を主役とした人類総体のトータルな発想の転換である。そこにこそ、核という″外から″の衝撃をはね返す″内から″の対応の原点がある、と私は信じている。
 変動常なき歴史の過程は、佇立ちょりつして今を見守っている。未来世紀は、静かに、確実に近づきつつある。この過去から現在、未来へわたる歴史の流れの中にあって、我々の果たすべき使命は何か――。人間以上の尊厳なる者はない、生命以上の宝はないとの不滅の原点に立って、人間の善性を信じ、触発し、啓発しゆくことをおいてほかにあるまい。もし人類史のかつてない試練を超克することに成功したならば、我々の足跡は、一国の勝利ではなく、人類の勝利として、長く歴史に記しとどめられるであろう。
 (昭和54年2月 『創大平和研究』創刊号)

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