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世界平和のために  

「人生問答」松下幸之助(池田大作全集第8巻)

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23  アジアに共同体は可能か
 池田 現在、ヨーロッパにはECがあり、善きにつけ、悪しきにつけ、強い結東と影響力をもっております。コーロッパは共同体を実現することにより、アメリカとともに自由主義圏の一大文柱となることができたわけですが、アジアにECのような共同体を形成することは可能でしょうか。また日本はそのなかでどのような役割を果たすべきだとお考えですか。
 松下 ECのような共同体をアジアにつくることは、ヨーロッパの場合に比べて、はるかにむずかしいと思います。コーロッパの場合は、なんといっても、おおむね一つの大陸にあるうえに、各国の知識の程度、富の程度がほぼ接近していますし、意識も同じくしています。
 しかしアジアはそうではありません。地理的にも島国が多いうえに、各国民の間の知識の差、富の差というものが大きく、開発の非常に遅れた国、あるていど進んだ国、日本のような欧米先進国上肩を並べる国など、いろいろな様相を呈しています。
 ですから、アジアに共同体をつくることについては、ECの場合の十倍あるいはそれ以上の困難がともない、努力が要求されるでしょう。したがって、今ただちに実現することはできないと思います。
 しかし、永遠に不可能かというと、けっしてそうではないでしょう。努力をしていけば必ずできると思います。また、そうした共同体の結成がアジアの国々の共通の発展にプラスするところも大きいと思うのです。
 そういうことを考えますと、たとえむずかしくても、アジア共同体の結成という可能性に挑戦していくことは、非常に意義があると考えられます。非常にむずかしいといっても、世界連邦を結成するのに比べれば、はるかに楽でしょう。その世界連邦でも結成していこうと今日多くの人が考えているのですから、アジア共同体も、その可能性を信じ、またそのことが共通の平和と幸せをもたらすことを信じて、実現に取り組んでいったらいいと思います。
 ただ、こういう大きな仕事をするについては目標をはっきりさせておくことが大切です。そこで私は、今から約三十年後の紀元二千年に共同体の結成を目指して準備を進めていってはどうかと思うのです。それぐらいの年月をかけ、各国の合意のもとにやっていけば十分可能ではないかと思います。
 そういうことをいくつかの国が提唱し、世話役となっていくことが、アジア全体の発展のために望ましいと思います。その場合、日本は重要なる世話役の一員を務めるべきでしょう。
24  平和を守る義務
 松下 お互い国民として果たすべき、責任とか義務というものについては、憲法その他の法律に定められているものもあれば、成文化されていなくても、いわば無言のうちにお互いが承認しあっているような倫理的道徳的なものもあると思います。そこで、そのような有形無形の国民としての義務のなかで、これはとくに大切だというょうな、三大義務あるいは五大義務といったものをかりに考えるとすれば、それはどういう項目になるでしょうか。
 池田 私は平凡な一庶民であって、国民の三大義務とか五大義務を示す立場ではありません。また義務は本来的に、誰かが示すというものでもないと思います。時代に生きる民衆が自然のうちに生みだし、定めていくものかと思います。
 ただ、あえて一点あげれば「平和を守る義務」ということです。今後の日本の進路を考えると、ここに日本の人びと全体のコンセンサスを高め、人類の平和のリーダーシップをとっていくことの必要性を痛感いたします。平和は、人間が願う最も基本的な欲求ではありますが、今日まで、この欲求を満たしえてきたとはけっしていえません。平和を脅かす要因は、人間社会のなかに常に深く宿っているようです。
 ユネスコ憲章の前文に「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という指導精神がうたわれていますが、私は、平和を守るという、この一点を国民的義務として訴えておきたいと思います。

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