Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第18巻 「前進」 前進

小説「新・人間革命」

前後
46  前進(46)
 山本伸一の声に、さらに力がこもっていった。
 「最初の『国土乱れん時は』の『国土』とは、自然環境的な面とともに、『社会』という意味をもっております。
 自然と人間とを含めた総体としての『国土』であり、その国土が乱れる時には、それ以前に、必ず人間のエゴ、いな、エゴよりもっと本質的な生命のもつ魔性が、底流として激しく揺れ動くのであります。
 その結果、『万民』すなわち、あらゆる人びとが狂乱の巷へと進み、やがて、その国土、社会は、破滅の方向へと走っていく。
 ゆえに、この『鬼神乱る』という生命の本質を解決する法をもたない限り、社会の乱れを解決することはできない。
 ゆえに、仏法という生命の大哲理を流布する、私ども創価学会の使命はあまりにも大きい。
 今こそ、広宣流布の新しき潮流をもって、社会を潤す時代がきたことを、私は宣言しておきたいのであります」
 怒涛を思わせる大拍手が公会堂にこだました。
 この日集った人びとも不況の波を被り、皆、暮らしは逼迫しつつあった。しかし、使命を自覚した同志は燃えていた。
 ″だからこそ、私たちがいるのだ。私たちの手で、人間主義の時代を、生命の讃歌の時代を開くのだ。さあ、折伏だ、前進だ!″
 ″今こそ、不況に負けない努力を重ね、見事な信心の実証を示そう!″
 皆、こう思うと、勇気がわき、力がみなぎり、境涯が大きく開かれていくのを感じた。
 生きる限り、苦悩はある。しかし、だから不幸なのではない。その苦悩に縛られ、心が閉塞し、希望を、勇気を、前進の心意気を失ってしまうがゆえに不幸なのだ。
 広宣流布の使命に生きるならば、わが心は洋々と開かれ、胸中に歓喜の太陽が昇る。
 太陽に照らされれば、苦悩の闇は瞬時に消え去り、障害さえも新しさ明日への飛躍台となるのである。
 ペスタロッチは力強く訴えた。
 「金は熱火に焼け失せることはなく、否、それは燃え上る炎の中にあってこそ精煉されるのである」
47  前進(47)
 この本部総会で山本伸一は、世界広布の新たな展開にも言及した。
 彼はまず、各国のメンバーの連携を深め、協力し合っていくために、この五月に「ヨーロッパ会議」が、八月には「パン・アメリカン連盟」が、また、十二月の十三日に「東南アジア仏教者文化会議」が結成されたことを伝えた。
 そして、さらに海外メンバーの交流を図り、世界平和を本格的に推進していくために、「国際センター」の設置を発表したのである。
 この「国際センター」は独自の法人とし、海外のメンバーとの連絡、指導スタッフの派遣、出版活動や各種活動の支援などにあたるもので、既に建物も、東京・千駄ヶ谷に建設中であった。
 伸一は、設置の意義について語っていった。
 「世界各地の活動の進展状況は、国、地域によって千差万別であり、仏法を受け入れる機根も、国柄や民族性などによって多様であります。
 したがって、海外の仏法流布は一様に考えるのではなく、あくまでもその国や地域の人びとの自主性と情熱、責任感によって進められるべきものであります。
 ゆえに、『国際センター』の基本的性格も、各国の現地の主体性を尊重し、これを根本としたうえで、全力で支援し、守るということに重点を置くことになります」
 ここで伸一は、参加者に呼びかけた。
 「いよいよ舞台は世界です。私も戦います。
 その意味から明年は、世界各地に出かけていって、同志を激励してさしあげたいと考えておりますが、日本の皆さん、よろしいでしょうか」
 皆、大拍手で応えた。
 「では、留守中はよろしくお願いしますよ。
 日蓮大聖人の仏法は、世界の仏法です。私どもは世界的視野に立ち、同じ創価家族であるという″開かれた心をもつ国際人″であります。
 人類の幸福と、真実の人間共和をめざして、意気揚々と前進していこうではありませんか!」
 またしても拍手の嵐に包まれた。
 伸一の心は、戦争、経済の混乱等々、世界を覆う暗雲を見すえていた。
 彼は英知の翼を広げ、平和の大空に飛翔する瞬間を、満を持して待っていたのである。

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