Nichiren・Ikeda
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43 衆望(43)
この年は、十二月二十五日に、一年の掉尾を飾る本部幹部会が開かれたが、山本伸一に休みはなかった。
彼は、二十七日、北海道の雪の大地に立った。
札幌市琴似町(当時)に、新たに完成した北海道本部の落成式に出席するためである。
新北海道本部は、鉄筋コンクリート四階建てで、全道の活動の中心拠点として、使われることになる。
なお、これにともない、それまでの北海道本部は、札幌会館として使用されることになった。
この新北海道本部の完成をもって、学会の会館は百八になったのである。
伸一は、この年の五月三日の本部総会で、二、三年の間に、大都市の場合は数会館を、また、最低、各県に一会館を設置することを発表したが、その構想は着々と実行に移されていたのである。
彼は、牧口初代会長、戸田第二代会長のゆかりの地である北海道に、立派な会館が誕生したことが、何よりも嬉しかった。
広宣流布に生涯を捧げた先師、恩師に報いる道は、ただ一つしかない。
それは、現実のうえで、どれだけ広宣流布を進めることができたかである。そのための法城となる会館であるがゆえに、彼は、新本部の落成が、嬉しくてならなかったのだ。
落成式は、午後三時過ぎから行われることになっていたが、開会直前まで、雪が降り続いていた。
伸一は、新北海道本部に向かう車中、一面の銀世界を見ながら思った。
″この北の国にも、やがて春が来る。白雪はとけ、大地は緑に変わり、色とりどりの花が咲き香る。
学会は今年、遂に「本門の時代」の幕を開いた。それは、幸福の春、平和の春の夜明けだ。
いよいよ、広布の歯車は動き始め、フル回転の時代が始まったのだ。
時は、瞬く間に過ぎ去ってしまう。一日一日が勝負だ。一瞬一瞬が勝負だ。今しかない! 走れ、走り抜くんだ!″
車は、雪の原野を疾走していった。
明一九六五年(昭和四十年)のテーマは、「勝利の年」であった。
伸一は、その勝利への助走を、北海道の吹雪の大地で、さっそうと開始した。
勝敗の鍵は、助走にこそある。新しき年の夜明けに向かい、伸一は、まず自らが、あらん限りの力を振り絞って、全速力で走り始めたのである。