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日蓮大聖人・池田大作

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成績を上げる法 自分を信じよ! あきらめるな

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

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30  生徒の気持ちを知ってほしい
 池田 きょうは、たくさん具体的なアドバイスをしてもらいました。これで全てというわけではないし、また勉強法について、まったく違う意見をもっている方もいらっしゃるでしょう。個人差もある。だから諸君は、自分で「これならやってみよう」と思うことを、一つでも二つでも「実行」してみることだ。すぐに結果は出ないかもしれない。しかし負けないで「実行」を続けることだ。挫折したら、くよくよしているより、また立ち上がって進めばいい。
 「わからない」ことは悲しい。「わからない」まま毎日、六時間も座っている生徒の気持ちを、私は教師の方々に、わかってほしいのです。簡単に切り捨てないでほしいのです。
 教師にとって、生徒を否定することは、自分を否定することのはずです。どんな生徒でも、生徒は生徒です。学ぶ権利がある。伸びる権利がある。
 だれだって勉強が「わかりたい」のです。自分を、あきらめてなんかいないんです。「あきらめさせられた」のです。その絶望感をわかってあげるところからしか、教育は始まらないのではないでしょうか。
 数学科教諭 その通りです。私には、今も忘れられない″事件″があります。勉強が苦手で「ハシにも棒にもかからない」と言われたA君がいました。テストは零点。授業も″ふける″。勉強は親からも期待されていない。暴力は振るわないが、遊び歩く。それで心のバランスをとっていたのだろう、と私は思いました。ある時、彼が言いました。
 「先生、俺が何でこんなに苦しんでるか、わかるか?」
 「申しわけないが、教えてくれないか……」
 「俺、本当に苦しいんだ。苦しいから、俺に代わって、俺の人生を生きてもらえるか? 無理だろ!」
 「それは無理だな……」
 「無理だよなぁ、先生。俺の苦しみ、ちょっとでもいいから分けもってくれるか?無理だろ!」
 「それも無理だな……」
 「そうだよなぁ。だから、俺は、どんなに苦しくても、俺を生きるしかないって、俺は知ってるんだ。だから苦しいんだ。
 だから先生、わかってくれさえすればいいんだ。『わかってもらえる』という気がすれば、もう一歩、前に生きてみようという気になるから」
 衝撃でした。万巻の教育書を読むよりも、深い衝撃でした。
 以来、私は「生徒を丸ごとわかろう。その人の生きてきたそのままを、謙虚にわかろうとするしかない」と、努力してきました。
 A君は「自分のことをわかってくれた」と感じてくれたのでしょう。数学で「ここがわかんないよ、先生」とか、「このところ、どうしてこうなるの」「これでいいのか、見てよ」と、自分から来てくれるようになりました。当初は卒業もどうなるかと心配しましたが、それほど大騒ぎをしなくても、ちゃんと卒業していけました。
31  「わからない」ことは恥ではない
 池田 子どもは「変わる」ものです。はっとするくらい「変わる」ものです。変わる「力」を秘めているのです。だから絶対、今の姿だけで決めつけてはいけない。
 島秋人という歌人がいました。彼は死刑囚だった。子どものころから「手がつけられないワル」で、ある時、盗みに入った家で、家の婦人に見つかり、もみ合っているうちに殺してしまった。
 若くして死刑を待つばかりだった彼は、牢獄の中で自分の人生を振り返り、たった一回だけ、ほめられたことを思い出した。図画の時間に、教師から「絵はうまくないが、構図がいい」と、ほめられた。その一言が、闇に住む彼にとって″光″となったのです。
 その教師に連絡をとった彼は、教師の夫人の影響で短歌を始めます。彼は心の苦しみを表現する手段をもったのです。そして、みるみる才能を発揮して、新聞の歌壇にも入選を繰り返し、すばらしい歌集まで出した。人間的な成長は、めざましく、「まったくの別人」となったのです。彼を支えたのは、教師の一言だったのです。(島秋人『遺愛集』東京美術、参照)
 社会科教諭 重大な責任を感じます。
 池田 ともかく、最初に言ったように、勉強の目的は、大きな深い心をもった「魅力ある人間」になることです。「光っている人間」に。だから、テストの点が少々、良かろうが悪かろうが、からっとして、「自分は、やるだけのことはやったんだ!」と、また朗らかに努力していけばいい。
 「わからない」ことは恥ずかしくない。「あきらめる」ことが恥ずかしいのです。
 笑うことです。笑ったほうが血行も良くなり、頭もよく働く。
 そうやって、悠々と努力する「くせ」をつけた人は、将来、何だって乗り越えられる。その「くせ」こそが、最高の「財産」です。だから、今、「目の前の課題に勝て!」「何かを始めよ!」と訴えたいのです。

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