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日蓮大聖人・池田大作

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文学との語らい 文学で「人間の心」を学べ「人生の深さ」を学べ

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

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15  文学を知れば景色の感じ方も変わる
 ―― 先生は世界桂冠詩人ですが、詩は、どのようにしてつくられるのでしょうか。
 池田 思ったことを、そのまま表現しよう、そのまま文字にしよう、と思っています。文学をたくさん読んでいると、自然と、その中の言葉が自分のものとなっていく。
 風景を見て、自然と言葉が出てくるようになる。景色の感じ方が違ってくる。木々の美しい緑を見て、動物は何も感じないかもしれない。芸術家はすばらしいと思い、庭師は健康な木々だと思うでしょう。
 たとえば、月が浜辺に照っている。
 「八百日やほかゆく浜の真砂まさごをしきかへて玉になしつる秋の夜の月」(『千載和歌集』久保田淳校注、岩波文庫)――広大な浜辺の砂を一面の宝石の原に敷き変える秋の月よ――という歌を思い出せば、浜辺はとたんに宝石の園に変わるでしょう。
 チリの女性詩人・ミストラルの
  「軽やかな雲よ、
   絹のような雲よ、
   わたしの魂を
   青空かけて運べ」(「雲に寄す」野々山ミチコ訳、『世界の詩集12 世界女流名詩集』所収、角川書店)
 という詩を読んだあとでは、風にも雲にも、切ないまでの深き思いを感じるようになるかもしれない。
 美しい詩といっても、飾った言葉が美しいのではない。本当の美しさは、心の美しさからしか出てこない。泥まみれになってでも、人間性のために戦っていく、その心から美しい言葉も生まれてくるのではないだろうか。
 そういう人間性と文学性とを融合させ、それを生活のうえで、どう表現していこうか――そこに生まれるのが詩なのです。また本当の文学なのです。
 古今の文学は、人間の「心から心へ」差しのべられた橋です。どれだけ橋を渡るかで、自分の心の中身が決まっていくのです。

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