Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第10巻 「桂冠」 桂冠

小説「新・人間革命」

前後
48  桂冠(48)
 参加者は皆、すべてを受け止めていこうとする真剣な顔で、山本伸一の指導に耳をそばだてていた。
 「牧口先生が信心を始められたのは五十七歳です。戸田先生が出獄され、広宣流布にただ一人立たれたのは四十五歳です。
 いずれも、壮年時代に一大発心をされ、広宣流布の戦を起こされた。それが、わが学会の伝統です。
 私もまた、壮年部です。
 どうか、皆さんは、私とともに、学会精神を根本として雄々しく立ち上がり、創価の城を支えゆく、黄金柱になっていただきたいのであります」
 どの顔も紅潮していた。どの顔にも、広宣流布の闘将の輝きがあった。
 最後に伸一は、「頼みとなるのは皆さんです。壮年部が大きく成長し、堅固な広宣流布の構えができるならば、わが創価学会は永久に盤石です」と語って、話を結んだ。
 誇りと歓喜にあふれた誓いの大拍手が、雷鳴のように轟き、いつまでも鳴りやまなかった。
 このあと、総務の森川一正が、伸一が壮年部の結成を記念して書き上げたばかりの、『大白蓮華』四月号の巻頭言「妙法の名将」を朗読した。
 そのなかで伸一は、″妙法の名将″の資格を論じていた。
 第一に御本尊への絶対の確信。第二に難事をも成し遂げゆく力。第三に社会のすべてに通暁した世雄。第四に後輩を育成していく熱意。第五に人間性豊かな包容力ある指導者。第六に旺盛な責任感と計画性――である。
 この巻頭言によって、壮年部のめざすべき指標も、すべて明らかになった。
 伸一の会長就任以来、約六年。ここに、新しい時代への本格的な布陣は、すべて整ったのだ。
 伸一は、参加者に一礼すると、出口に向かって歩き始めたが、足を止めた。そして、拳を掲げて言った。
 「皆さん! 一緒に戦いましょう! 新しい歴史をつくりましょう! 同じ一生ならば、花の法戦に生きようではないですか!」
 「ウォー」という歓声をあげながら、皆も拳を突き出した。
 その目は感涙で潤んでいた。闘魂は火柱となって燃え上がったのだ。
 誇り高き桂冠の王者が、妙法の名将が、今、出陣を開始したのだ。
 外は、既に夜の帳に包まれていたが、学会本部の三階広間は、明々とした歓喜の光に包まれていた。

1
48