Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第10巻 「桂冠」 桂冠

小説「新・人間革命」

前後
47  桂冠(47)
 山本伸一は、全壮年部員に、一生成仏の道を、人間革命の道を、三世にわたる栄光と勝利の道を、歩み通してほしかった。
 退転は、自分自身を裏切ることである。
 彼は、かつて、学会員でありながら、戸田城聖や学会を誹謗、中傷した反逆の徒が、最後は惨めこの上ない姿になった事実をあげて、生涯、信心を貫き通していくことの大切さを語っていった。
 その声の響きには、一人たりとも落とすまいとの、強い思いがあふれていた。
 「仏法の厳然たる因果の理法からは、誰人も逃げることはできない。
 だから、たとえ、どんなに批判され、罵倒されようが、御本尊、学会を疑わず、大冥益を確信し、生涯、信心を全うし抜いていくことです。
 大聖人は、法華経を引かれて、強盛に信心を貫いていくならば、『現世安穏、後生善処』(現世安穏にして、後に善処に生ず)と明言されています。御本仏の御言葉に嘘はありません」
 ここで、彼の声に、一段と力がこもった。
 「壮年部の皆さんは、これからが、人生の総仕上げの時代です。
 壮年には力がある。それをすべて、広宣流布のために生かしていくんです。
 大聖人は『かりにも法華経のゆへに命をすてよ、つゆを大海にあつらへ・ちりを大地にうづむとをもへ』と仰せです。
 死は一定です。それならば、その命を、生命の永遠の大法である、法華経のために捨てなさい。つまり、広宣流布のために使っていきなさい――と、大聖人は言われている。
 それこそが、露を大海に入れ、塵を大地に埋めるように、自らが、妙法という大宇宙の生命に融合し、永遠の生命を生きることになるからです。
 一生は早い。しかも、元気に動き回れる時代は、限られています。壮年になれば、人生は、あっという間に過ぎていきます。
 その壮年が、今、立たずして、いつ立ち上がるんですか! 今、戦わずして、いつ戦うんですか!
 いったい、何十年後に立ち上がるというんですか。そのころには、どうなっているか、わからないではありませんか。
 今が黄金の時なんです。限りある命の時間ではないですか。悔いを残すようなことをさせたくないから、私は言うんです!」
 彼の声は、獅子吼のように、壮年の胸深く轟きわたった。
48  桂冠(48)
 参加者は皆、すべてを受け止めていこうとする真剣な顔で、山本伸一の指導に耳をそばだてていた。
 「牧口先生が信心を始められたのは五十七歳です。戸田先生が出獄され、広宣流布にただ一人立たれたのは四十五歳です。
 いずれも、壮年時代に一大発心をされ、広宣流布の戦を起こされた。それが、わが学会の伝統です。
 私もまた、壮年部です。
 どうか、皆さんは、私とともに、学会精神を根本として雄々しく立ち上がり、創価の城を支えゆく、黄金柱になっていただきたいのであります」
 どの顔も紅潮していた。どの顔にも、広宣流布の闘将の輝きがあった。
 最後に伸一は、「頼みとなるのは皆さんです。壮年部が大きく成長し、堅固な広宣流布の構えができるならば、わが創価学会は永久に盤石です」と語って、話を結んだ。
 誇りと歓喜にあふれた誓いの大拍手が、雷鳴のように轟き、いつまでも鳴りやまなかった。
 このあと、総務の森川一正が、伸一が壮年部の結成を記念して書き上げたばかりの、『大白蓮華』四月号の巻頭言「妙法の名将」を朗読した。
 そのなかで伸一は、″妙法の名将″の資格を論じていた。
 第一に御本尊への絶対の確信。第二に難事をも成し遂げゆく力。第三に社会のすべてに通暁した世雄。第四に後輩を育成していく熱意。第五に人間性豊かな包容力ある指導者。第六に旺盛な責任感と計画性――である。
 この巻頭言によって、壮年部のめざすべき指標も、すべて明らかになった。
 伸一の会長就任以来、約六年。ここに、新しい時代への本格的な布陣は、すべて整ったのだ。
 伸一は、参加者に一礼すると、出口に向かって歩き始めたが、足を止めた。そして、拳を掲げて言った。
 「皆さん! 一緒に戦いましょう! 新しい歴史をつくりましょう! 同じ一生ならば、花の法戦に生きようではないですか!」
 「ウォー」という歓声をあげながら、皆も拳を突き出した。
 その目は感涙で潤んでいた。闘魂は火柱となって燃え上がったのだ。
 誇り高き桂冠の王者が、妙法の名将が、今、出陣を開始したのだ。
 外は、既に夜の帳に包まれていたが、学会本部の三階広間は、明々とした歓喜の光に包まれていた。

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