Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

ジャン=ポール・ベルトラン社長 フランスの出版社・ロシェ社

随筆 世界交友録Ⅲ(池田大作全集第124巻)

前後
4  「未来」を確信し、今、樹を植える
 かつて、出版は、圧政との戦いであった。
 「言わねばならぬ」ことのために、命さえ捨てた。ユゴーも、十九年の流刑に耐えた。
 今、出版は、商業主義との戦いかもしれない。「売れさえすればいい」との戦いである。
 先人が命がけでもたらしてくれた「自由」を乱用し、低俗と嘘の腐臭のなかで、文化への「志」が死滅しかけている。
 それは読者の責任か。出版人の責任か。
 「日本は高度情報化社会だ」と胸を張ったところで、情報の中身が貧困なら何になろうか?
 氏は、ユゴーのエピソードを語ってくださった。
 「ユゴーがガンジー島に亡命したとき、島に柏の樹を一本、植えました。この樹がやがて大きくなるころ、彼の信条であった『ヨーロッパ合衆国』が実現する日を目撃するだろうと。それから百数十年がたちました。かつて夢であった『欧州共同体』は実現しつつあります。ユゴーは、正しかったのです! どんなに人が反対しても、未来を展望し、確信し、勇気をもって戦ったのです」
 語る氏の声のなかに、氏自身の人生への思いが宿っていた。
 出版もまた、後世を信じて”樹を植える”作業であろう。
 「表現における『質』の絶えざる追求――出版という仕事は、私の人生そのものなのです」
 こういう方がおられるかぎり、やはりフランスは「文化対置」だと私は思う。

1
4