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日蓮大聖人・池田大作

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原水爆宣言に思う 原水爆宣言満一年に

1958.9.26 「会長講演集」第4巻

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1  私には、科学の知識がまったくない。したがって、核実験によっての、その被害が、どれほどすさまじいものか知らぬ。
 すなわち、放射性同位元素、ストロンチウム90、セシウム137等といわれても、想像がつかない。しかし、第二次世界大戦においての広島、長崎投下の原爆の魔力は、断じて忘れることはできぬ。
 一瞬にして、幾十万の尊き生命を殺傷した地獄の使いたる原爆の使用は、絶対に禁止しなければならない。
 原水爆の使用は、地球の自殺であり、人類の自殺を意味する。ひとりの人生が誤った人生航路を行き、最後に希望を失って、自ら青酸カリを飲んで生命を断つことに通じよう。その根本は、人生の目的、人生の幸福への、正しく強き理念を失った人の末路の姿である。国家にもまた民族にも共通する問題である。ここに、末法の大宗教の出現の絶対必要なことも、必然である。
 現今では、当時の原爆の二十倍、三十倍の威力をもつと聞く。じつに恐ろしき世界となったものである。
 法華経(譬喩品第三)にいわく『三界に安きことなし、猶火宅の如し。衆苦充満して、甚だ怖畏すべし』
 当体義抄にいわく『此の経を謗せば義是れ十界の仏種を断ずるに当る是の人無間に於て決定して堕在す何ぞ出ずる期を得んや
 末法の時代、末法の民衆、そして、末法の救世主によって、末法の仏法を信仰する以外に、根本的解決の道はなくなっている。
 かつて、日蓮大聖人様、御在世の文永、弘安の役に、日本は初めて火薬に見舞われたと聞いたことがある。
 ここにふたたび、日蓮正宗を弾圧した罰によって、世界で初めて原爆の犠牲をうたのも日本であった。仏罰のきびしさをしみじみと覚知せねばならぬ。そして『妙法帰一にめざめよ』との聖鐘を、いまこそ日本民族が聞かねばならぬ秋がきたのである。
2  戦争の話を語っても、空襲の恐ろしさを聞かれても、経験のないものには、まったく実感のともなわぬものである。世界で原爆の恐ろしさを体験したのは、日本民族だけである。その民族こそ、世界に向かって堂々と原水爆禁止をば叫びきっていく権利と使命があるのもとうぜんである。
 いくら平和運動を起こしても、激流に流されてしまう。いくら平和塔を建てても、犠牲者を救うことはできない。また、政治的運動を起こしても、そんな小才では、最後の願望をば望めるわけがない。また、感傷的な叫びをいくら叫んでも、大国を相手になにが響こうか、なにが動こうか。
 心ある人々は、皆、原水爆の使用や、核実験を禁止することは、とうぜんのことと考えている。
 だが、いくら観念をめぐらしても、口だけで正義を叫んでも、解決のできぬ時代である。権力と武力と財力の時代なのだ。アメリカは金さえもうかればなんでもやる国である。ソ連は人を物と思って殺すことが平気の国といえよう。
 この問題は武力と武力との拡大によって解決できる問題でもない。政治的解決を願っても、一時的なものにすぎない。
 ただひとつ、戸田会長先生は『広宣流布が成就するならば、絶対に、原水爆弾は日本の国に落ちない』と断言なさった。『もし落ちるようなことがあったならば、仏さまに力がないのだ。皆信心をやめようよ。こんなことは、絶対ないよ』と語られたことを思いだす。
3  末法の救世主・日蓮大聖人様の御意のまま、仏天の力と加護を信じて、日本も世界も救出する以外に道がなくなっている。
 昨年九月八日、私たちの師匠である戸田会長先生は、青年部の遺訓として『原水爆を禁止させよ』との宣言をなさった。
 『いやしくも、私の弟子であるならば、私のきょうの声明を継いで、全世界にこの意味を透徹させてもらいたいと思うのであります。それは、核あるいは原子爆弾の実験禁止運動が、いま全世界に起こっているが、私はその奥に隠されているところのツメをもぎ取りたいと思う。
 それは、もし原水爆をいずこの国であろうと、それが勝っても負けても、それを使用したものは、ことごとく死刑にすべきであるということを主張するものであります。
 なぜかならば、われわれ世界の民衆は、生存の権利をもっております。その権利をおびやかすものは、これ魔ものであり、サタンであり、怪物であります』
 戸田会長先生は政治家ではない。人類救済の大将軍であられ、賢王である。
 未曾有の世界の難関を救出せんとして、その救出の原理たる仏法をひろめきって逝かれたのである。
 『青年部は王子のごとし』師の遺志を継いで、いかなる力たりとも、大聖哲の法に敵する者は断じて消えていくことを決意として、邁進しきらねばならぬ。
 第五回体育大会も、盛会裏に終わった。毎年の体育大会ごとに、青年部はこの先生の宣言を再自覚していかねばならぬ。
 先生の宣言以来、一年にして世界の核実験の禁止は最高潮に達した。『一心一念、法界に遍し』まことに不思議といわざるをえない。
 御遺訓の成就するまで、いかなる難にも負けず、会長先生に御報告できるようにがんばらねばならぬ。(当時、総務)

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