Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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2 心の詩――自然・人間・宇宙の営み  

「希望の選択」ディビッド・クリーガー(池田大作全集第110巻)

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5  文学は人間の魂を救済する
 池田 こうして聞いていますと、所長は私の考えを代弁してくれているような感じにとらわれます。ホメロスの昔から、現代文学にいたるまで、人は文学を通して、精神を成長させてきました。
 人生の透徹した知恵、社会のあり方、人間の持つ偉大さと愚かさ等々、総じて人間という存在の探求は、偉大な文学には共通した要素です。古典が今も読み継がれる理由は、まさにそこにあるといえるでしょう。
 私の師も、文学を通して人生万般にわたる知恵を授けてくれました。あらためて、本当にありがたいことであったと感謝しています。
 創価学会の未来部では読書感想文のコンクールなどを催し、読書を奨励しています。これも文学に親しみ、知性と人格を涵養するきっかけとなれば、との思いからです。
 クリーガー 若い人たちが、偉大な文学にもっと親しみ、それをみずからの教育の一部にして、思想を深めるならば、戦争は起こりにくくなるだろうと思います。またそれによって、若い人たちは、あらゆる文化や、すべての人間に備わる本質的な共通性を、よく理解できるのではないかと思います。
 戦争の本質を認識し、他の人間を殺戮するのは何ら英雄的行為でもないことを理解すれば、若い人たちはみずからが兵士として使われることを許さなくなるでしょう。
 池田 文学には、人間の魂を鍛え、深め、救済する働きがあります。
 その意味では、人間を高め、結びつける宗教は、文学と似ています。聖書も仏典も、ある意味で優れた文学作品といえましょう。優れた文学作品は人類の遺産です。この遺産をどう活用していくかは、人間が「人間として」成長していくために、絶対にさけては通れない問題ではないでしょうか。
 クリーガー 宗教文学は、対話の大きなテーマとなるべき豊かな分野です。
 これまで、世界宗教の偉大な遺産は、あまりにも狭量で冷笑的な形で用いられることが多く、人間の尊厳性を涵養するどころか、ある場合には戦争さえ助長してきました。それは、キリスト教の十字軍や、宗教裁判の歴史を考えればよくわかります。また、宗教の制度化は、しばしば宗教の本来のメッセージを歪め、時には宗教の心や、魂そのものまで奪ってしまう場合がありました。
 一方、偉大な文学や詩歌は、宗教的環境の内外から、われわれの人間的努力を、探求・解明し、人間精神の勝利の模範を示す役割を果たしてきたといえるでしょう。

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