Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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英国の行動するプリンセス アン王女

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
6  視野を広げる教育
 創価大学が海外交流に力を入れていることについて、こう言われた。
 「大学教育では、とくに学生が『視野を広げる』ことに重大な意義があります。その意味で、学生が国外に出かけ、見聞を広めることは、とても有意義なことだと思います」
 そのとおりである。
 大学を出ても、人格と一体の″生きた知識″がなければ、これからの国際的な実力社会、人道社会では役に立たない。形式の学歴社会は、すでに時代に合わなくなっている。
 しかし王女ご自身も、ロンドン大学の総長就任のさいには、″自分が大学に行ってないくせに″とマスコミが批判することを覚悟しなければならなかったという。
 王女は強い人である。「決断の人」である。感傷もない。逃避もない。
 王女の信条は、こうである。
 「あなたがベストを尽くしたならば、結果はどうあれ、それは失敗ではないのです。失敗から人は学ぶのですから」
 失敗とはむしろ、何も挑戦しないことだというのである。
 お会いして、はや四十分が過ぎていた。おいとまを告げると、王女は、わざわざエレベーターまで見送ってくださった。
 宮殿を出ると、五月の風が公園の花の香を運んできた。香しい空気を私は胸いっぱいに吸い込んだ。
 英国の伝統は健在なり。
 王女の毅然たる存在が、イギリスのため、世界のために、うれしかった。
 空を仰いで、シェークスピアの人間学を私は想起した。
 「王冠はわたしの心の中にある、頭の上にあるのではない。ダイヤモンドやインドの宝石で飾ってもなければ、目に見えるものでもない。わたしの王冠は『満足』という。との冠を持てる王はめったにいるものではない」(『へンリー六世 第三部』、前掲『シェイクスピアの言葉』所収)
 アン王女は、この、まれなる王冠をもてる女性であった。
 (一九九六年十月六日 「聖教新聞」掲載)

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