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日蓮大聖人・池田大作

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波紋  

小説「人間革命」3-4巻 (池田大作全集第145巻)

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14  十月一日、北京ペキン(ベイチン)で発表された中華人民共和国政府樹立の宣言が、世界の電波に乗った。国民党軍は広東カントン(コワントン)を放棄し、重慶じゅうけい(チョンチン)に遷都した。十一月には、さらに成都せいと(チョントウ)に移ったが、一カ月後、その成都も落ちた。国民党の要人は台湾に向かい、十二月七日、台北たいほく(タイペイ)に遷都した。
 これで国民党軍は、中国大陸から完全に追い出され、広大なる大陸は共産党軍の掌中に落ちたのである。共産党軍の信念と団結が、未曾有の勝利をもたらしたわけである。
 戦っても死ぬ。戦わなくても死ぬ。それならいっそ、戦おうではないか――それが彼らの叫びであり、誓いであった。
 その行動の果敢さと粘り強さは、あの有名な長征に見ることができよう。
 ヨーロッパでは、十月七日、東ドイツにドイツ民主共和国の樹立宣言があり、アジアでも十二月二十七日に、インドネシア連邦共和国が成立している。
 東西両陣営の冷戦は、いよいよ緊迫化しつつあった。そこでアメリカは、日本列島の防衛基地化を急がなければならなくなっていた。十一月一日には、米国務省から、対日講和条約の草案を準備中であることが発表されたのである。
 これこそ、第二次大戦後の、次の時代への態勢を有利に整えるためのものであったと考えられる。いや、それが焦眉の急となっていたのであろう。
 一九四九年(昭和二十四年)は、行く手に風雲をはらんで暮れていった。
 大晦日、山本伸一は、戸田城聖の家で、御書の講義を受けていた。
 終わって戸田は、ささやかながら、ご馳走を出してくれた。和やかな雰囲気であったが、彼は、一言、厳しい眼差しで言った。
 「内外ともに激動のさなかであるが、今こそ、君たち青年が、勉強しておかなければならない時だ。ぼくが、舞台はつくっておく。新しい平和の戦士となって、その舞台で大いに活躍するように――」

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