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日蓮大聖人・池田大作

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3 基礎科学は倫理観の覚醒を促す  

「新しき人類を」「学は光」V・A・サドーヴニチィ(池田大作全集第113巻)

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5  50年先の未来への深い責任感
 サドーヴニチィ 時代を先取りした、先駆的な「宣言」と私も思います。
 ですから、高等教育機関に課せられた役割はあまりにも大きいといわざるをえません。未来の学問、科学を創る学者、研究者を育てるのは、他でもない高等教育機関だからです。そして、古今を問わずいつの時代もそうであったように、高等教育の中核を為してきたのは、常に「大学」でした。
 今後50年の学問を背負って立つのは誰か。50年というのは、およそ2世代の学者、研究者が活躍する期間といえます。したがって、少なくとも2025年、もしくは2030年ぐらいまでの学術界の中核となって活躍するのは、現在大学を巣立っていく学生たちということになるわけです。そして、今後5年から10年間に大学に入学してくるであろう学生たちが、21世紀の中盤の学問を支えることになります。
 ゆえに、今、目の前に座っている学生たちの姿、彼らがいかなる教養を身につけて母校を巣立つか、その姿がそのまま、人類の未来を凝縮させているといっても過言ではないのです。
 その意味から、私は、人類の現在と未来の問題を考える時、問題解決の最終的鍵は、どこか遠くにあるのではない、モスクワ大学が如何なる教育を進めるか、いかなる人材を育てるかにあるのだ、との自覚を新たにせざるをえません。
 池田 優れた学者であり、卓越した教育者であられるモスクワ大学総長の、未来への深い責任感、そして学生に対する思い、愛情、期待が熱く伝わってくる言葉です。そうした総長の自覚、気概がキャンパスに張りつめている限り、モスクワ大学は健在であり、学生たちは幸せであると思います。
 前章で語り合ったように、残念ながら日本の大学では、これまでともすると“研究”に重点が置かれてきたように感じられます。大学教授としての評価も、学問的業績の方が主であって、教育者としての側面は、あまり評価の対象とされてこなかったようです。
 しかし、最近は、それをよしとしていることのできない諸事情が顕在してきているようです。
 私は、大学教育の在り方を、根本から見直す時が来ていると思います。
 総長が実践しておられるように、大学の主役はあくまで学生であるということを、私は、創価大学の創立者として、教師の方々に、繰り返し繰り返し訴えてきました。教師たるもの、自己の研鑚を怠ったり、自らの出世、栄転のための手段として学生を考えたりするとすれば、あまりに学生がかわいそうです。それでは、大学そのものの衰退を招いてしまいます。
 サドーヴニチィ 幾度となく創価大学にお伺いし、教職員の方々ともお会いし、創立者のそうした精神が、重く受けとめられていることを、私も、ひしひしと感じています。

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