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日蓮大聖人・池田大作

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3 「人間教育」に生命を注ぐ  

「希望の世紀へ 宝の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

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6  済州大学の総長に就任
  松下氏の言葉は、含蓄深いものがありますね。私も六十歳で学位を得た後、済州大学で行政大学院長を務め、一九九七年九月に総長に就任いたしました。
 まったく新しい挑戦となる、この重要な職務に就くにあたり、私は、今まで以上に強い心構えを持たねばならないと考え、ある奉仕活動に参加しました。
 総長という仕事は、大学を運営する上で大きな権力を持つが、その役目は、あくまで人間らしい立場から考えて教育の目的を果たすことにあると考え、社会で最も苦しい立場に置かれている人びとのもとで働くことで、それを今一度学ぼうと決意したのです。
 それで、小鹿ソロク島にあるハンセン病患者の施設での奉仕活動の一員に加えてもらうことになりました。
 池田 博士の誠実で高潔な人柄が偲ばれる話です。すべての指導者たちが、博士の行動に学ぶべきです。何のための職務であり、何のための責任なのか、それを忘れて、自らの権勢を誇ることにのみ忙しい指導者たちが、日本にはあまりにも多すぎます。
 人びとに尽くす、人びとの幸福のために生きるーー立場が高くなればなるほど、博士のように、常に原点に立ち返る姿勢こそ、真の賢人であると思います。
  過分な評価に、恐縮します。
 その奉仕活動で、私は、本当に得難い体験をすることができました。
 若い人たちといっしょに、草刈りや掃除、壁張りや洗濯をしたり、散髪をした患者さんたちの頭や顔を洗うのを手伝ったりしました。そんな私の姿を見て、周りの仲間たちは不思議がったり、感動したりしていました。
 何より私が学んだのは、患者さんたちが、自分たちの苦しい境遇に負けず、忍耐強く、常に希望をもって懸命に生きている姿でした。彼らの強さを、私たちのほうこそ見習わなければならないと痛感したのです。
 それで総長就任後も、毎年のように、済州大学の学生たち数十名を伴って、奉仕活動を続けてきました。
 池田 学生たちは、患者さんの懸命な姿とともに、博士が率先して奉仕に取り組んでいる姿に、多くのことを学んでいるのではないかと思います。
 まさに、「人間教育」の鑑と言えましょう。
 博士は、総長に就任される時も、こうした自らの教育方針をスピーチされたそうですね。
  ええ。学生や教職員を前に、こう話しました。
 「私たちのこの済州大学を、二十一世紀の人類社会の平和と繁栄を目指しての『真の人間主義』ーーすなわち、ニュー・ヒューマニズム、ニュー・ルネサンスの発源地となるよう、建設に取り組もう!
 そのためにも、まず私は、公益のために自らの私益を犠牲にすることはあっても、私益のために公益を犠牲にすることは秋毫ももないことを、ここに誓うものである」と。
 そんな思いもあったので、就任式は、一切の花束や花輪を遠慮することにしました。
 きわめて簡素な就任式でしたが、国内外の多くの友人や知人が祝福に駆けつけてくれたことが、一番うれしいことでした。
 池田 博士の教育理念は、私ども創価大学の目指すべき道と一致するものです。
 八月二十四日(二〇〇一年)に、アメリカ創価大学のオレンジ郡キャンパスで第一回の入学式が行なわれましたが、ここで日本の創価大学とともに、「真の人間主義」のための新しい教育に挑戦していきたいと決意しています。
 博士が言われるように、教育こそが、「世界の平和」と「民衆の幸福」の一切の基盤となるものです。
 私は、尊敬する博士と力を合わせながら、「教育の光」で二十世紀を、そして人類の未来を明るく照らし出していきたいと強く念願しています。

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