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ペレストロイカの真実  

「二十世紀の精神の教訓」ミハイル・S・ゴルバチョフ(池田大作全集第105巻)

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14  「限りない前進」の人こそ永遠の勝利者
 ゴルバチョフ もう一つ、政治家として闘ってきたなかで得た、基本的な教訓があります。
 それは、錯覚から醒めたときに、どういう状況であっても、自分と不可分の、民衆の理性と良心への信頼を失ってはならないということです。
 国民の創造的な力を信じることのできない政治家は、死んだも同然であり、自分自身も、何かを創造する能力を失い、偉大な仕事ができなくなってしまいます。
 本質的に見て、私の改革運動の原動力となっていたのは、自国の民衆への信頼、ソ連人が自由を得れば、創造のエネルギーを発揮するにちがいないとの確信でした。
 共産主義的全体主義、スターリン社会主義の奥にあるのは、国民に対する恐怖心であり、民衆の精神力に対する不信感であったことは、ペレストロイカをともに始めたわれわれにとって、明白なことでした。
 池田 重大な観点です。
 ゴルバチョフ ペレストロイカを始めた当初、まず党や産業の活動家が、国民を安い品物、従順な労働力として見てきた癖を、克服しようと努めました。
 当時、私たちが打ち出したスローガンは、″国民を恐れるな″ということでした。
 この指針は内部向けですが、それを口にすることが危険であったときも、私は、断固守りぬきました。
 しかし、わが国で、民主改革が確固としたものになってきた今、私にとって、民衆への信頼は、いやまして神聖なものとなっています。
 さて、私は幸福かと問われるのであれば、その質問に答えるのは容易ではありません。
 私が、舵を握っていた船を、おだやかな水域にまでもっていけなかったし、ノボ=オガリョフスク・プロセス(主権国家連合再編成案)を完成させられなかったのは、今も残念です。
 しかし、もっと広い意味で見ていけば、私は、二十世紀最大の変革に参加したのみならず、そのプロセスの陣頭指揮をとるべく、運命づけられたことは、幸運だったといえるでしょう。
 私は、歴史の扉をたたき、扉は、私の前で、皆のために開きました。世界的な核による惨事への脅威は、去っていきました。
 池田 核の廃絶は、恩師の遺訓でもあります。
 総裁は、人類のために偉大な変革をなしとげました。
 そのスケールの大きさを、日本の指導者も学ぶベきだと思います。
 ゴルバチョフ ありがとうございます。
 結びに、もう一言。私は、自分の使命が終わったとは、思っていません。
 改革と自由の道を、ひとたび選んだ以上、生あるかぎり、私は、自分の仕事をまっとうしていきます。
 私が積んだ精神的、政治的財産は、必ずや、わが国の自由と人類文明の安全にプラスになると思います。そして、さらに前進していくために、十分なエネルギーが、自分のなかにあることを感じています。
 一九八六年の夏、第二七回党大会から数力月後には、すでに私は、民衆への信頼に基礎をおいた民主主義について、政治局ではっきりと明言しました。
 「ペレストロイカの最も重要な部分は、民主化である。民主主義を恐れることはない、政治局であろうと、小さな集団や家庭であろうと、問題や話し合いを恐れることはない……」と。
 池田 力強い言葉に、感銘しました。
 多くの人々が、今のあなたの発言に、希望と励ましを、見いだすことでしょう。
 トインビー博士に、モットーをお聞きしたさい、博士は、ラテン語で、「ラボレムス」と言われました。
 これは、「さあ、仕事をつづけよう」という意味です。
 「さあ、これからだ!」「いよいよ前進だ!」
 この前向きで、ポジティヴ(積極的)な生き方を、仏法では、「本因」の姿勢といいます。
 瞬間瞬間、自己完成への因を、たゆまず積み重ねていくなかに、真の充実と幸福がある。
 これこそ、仏法の真髄の生き方なのです。
 「限りない前進」「限りない希望」――その人こそ、永遠の勝利者です。
 以前、あなたは、『回想録』を締めくくる言葉を、こう考えていると語られましたね。
 「すべては、これからだ」と――。
 この心意気で、いきましょう!
 ゴルバチョフ ありがとうございます。
 その思いは、今もまったく変わっておりません。

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