Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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七 生命の誕生と進化  

「宇宙と人間のロマンを語る」チャンドラー・ウィックラマシンゲ(池田大作全集第103…

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5  〈生命的存在〉の大宇宙
 池田 博士のように、ビッグバン宇宙進化論のシナリオを信じない立場の学者もいます。その場合、星間塵の上に乗っている〈生命の種子〉は、いつ、どこで、どのような環境のもとで形成されていったとお考えですか。
 博士 ビッグバン宇宙論では、有機的構造をもった生命が純粋に機械的なプロセスから生まれるには時間が十分でない、と私は考えます。〈生命の種子〉は炭素や窒素・酸素・燐などの元素を必要としますが、これらが生ずるのは、銀河が形成されて恒星が進化し、超新星が爆発した後です。
 生命に適した状態が現れるのは、標準的なビッグバン宇宙論では、百二十億年以前よりさらにずっと前だったということはありえません。私が賛成したい定常宇宙論では、〈生命の種子〉と諸属性は宇宙の不変の構造の一部となっています。
 池田 テキサス大学のスティーブン・ワインバーグは、『宇宙創成はじめの三分間』(小尾信彌訳、ダイヤモンド社)の中で、現在の宇宙の進化論を説得力をもって論じ、その結果として「宇宙は無意味である」と言っております。
 仏教では「宇宙即我」と説いておりますが、この法理は、人間の生命と大宇宙とは本来的に密接不可分なつながりがあることを教えています。大宇宙そのものが〈生命的存在〉であり、それゆえに、宇宙には生命へと向かう傾向性が根源的に内在していると考えます。このような視座から、大宇宙の生々流転と人間生命の存在との間に深い意味を見いだすのです。
 もとより、ワインバーグの表明は冷静な科学の眼をとおしてのものであり、哲学のそれとは異なるでしょう。しかし、現実に生きている人間生命にとって、宇宙の存在はまったくなんの意味もないものでしょうか。
 博士 先生が説明された生命的宇宙にあたるものは、定常宇宙論の観点と驚くほど合致するのです。
 生命こそ宇宙本来の目的であると考えられましょう。つまり、宇宙全体が生命と意識の維持に向けられているということです。朝永振一郎博士の業績を世界に紹介したプリンストン大学のF・ダイソン博士も、その自伝でこの点について同様の深い考察を加えていますが、いかなる世界の分析においても、もし宇宙的生命に関する考察という側面が省略されるならば、ワインバーグと同じジレンマにおちいることになるでしょう。すなわち宇宙はまったく意味がないように見えることでしょう。

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