Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

子どもの病気 子どもの健康は親がつくる

「健康対話」(池田大作全集第66巻)

前後
1  森田 学校も夏休みに入り、どこの家庭でも子どもと接する機会が増えていると思います。ふだんは見逃していた子どもの体の異常に気づき、あわてる場合もあるかもしれません。そこで、「子どもの病気」を取り上げたいと思います。
 池田 わかりました。「子どもは大人を小さくしたものではない」という言葉がありますが、やはり子どもと大人の病気には違いがありますか。
 豊福 症状の現れ方、進み方に大人と違う特徴があります。また「子ども」とひとくちに言っても、生後一カ月の赤ちゃんと小学生では、かなり違います。個人差も大きい。
 池田 なるほど。「子どもの数だけ不思議がある」という言葉もありますが、「子どもの数だけ病気がある」と言えそうですね。
 森田 そう言っても過言ではありません。大人の病気とのいちばんの違いは、「成長や発達に影響する」という点です。
 池田 一生の問題ですね。だからこそ「健康管理」に細心の注意が必要です。すこやかに育ってほしい――これは、子どもを持つ親の世界共通の願いです。
2  発熱は「病原体から体を守る」反応
 池田 ところで、子どもはよく熱を出しますね。どうしてですか。
 森田 子どもは何でも触って、すぐに口に入れます。いわば、ウイルスや細菌を食べているようなものです。
 発熱の多くは、こうした感染が原因で起こります一般論としては、熱があるからといって、むやみに下げようとする必要はありません。しかし、高熱は要注意です。医師の診察を受けてください。
 豊福 「発熱」は、体に侵入したウイルスや細菌などの病原体から、体を守るために必要な反応の一つです。ウイルスなどと闘う体内の能力(免疫力)を、高める働きがあるのです。
 池田 病原体と闘っているという「サイン」ですね。
 森田 はい。体を守る力が、もっともよく働くのは三九度と言われています。四〇度を超えてしまうと、かえって力が低下してしまいます。
3  熱が出ても脳への影響はない
 池田 熱のために脳に異常が起こるようなことはないのですか。
 森田 髄膜炎など、脳の病気で高熱が出ることはあっても、高熱が出ること自体で脳が侵されることは、まずありません。
 池田 安心しました。まあ、子どもは、少しぐらいの熱では、安静にするどころか、元気に遊んでいる場合が多いですね。親の心配などまったく気にしていない。
 森田 まさに「親の心子知らず」です(笑い)。ですが、子ども自身が元気なときは、それほど心配する必要はありません。
 池田 正確な体温を測るには、どうすればいいですか。
 豊福 わきの下、口の中、直腸など、いろいろな場所で測る方法がありますが、日本では、わきの下で測るのが一般的です。わきの下の汗をよくふいで、くぼんだところに、体温計の先端を当ててください。自然に、ななめ(約四十五度)になります。水平にする必要はありません。
 森田 腕はまっすぐ下に伸ばします。乳幼児の場合は、わきを押さえて抱いてもかまいません。
 水銀式体温計なら、この状態で、約十分間待ちます。電子体温計などでは、一、二分くらいでわかります。
 池田 体温は、いつ測るかによっても違ってきますね。
 豊福 ええ。授乳後や食後、また泣いたり、運動したあとは体温が高くなります。十分ほど待つか、食前や安静なときに測るほうが正確です。また、夕方は(0.5〜1度くらい)高く、朝は低いのがふつうです。
 森田 平熱は、個人によって、また年齢によっても異なります。自分の平熱を知っておくと体調の目安になります。
4  熱が出たら水分を十分にとる
 池田 では、熱が出たときは、どうすればよいですか。
 森田 とにかく水分を十分に補給することが大切です。乳児の場合は、毎日、体の水分の六割が入れかわると言われています。熱を出したり下痢をすると、すぐに水分が足りなくなって脱水症状を起こしてしまいます。
 豊福 元気なときも同じです。水分が足りなくて熱が出ることもありますから。
 池田 「注意が必要な熱」はありますか。
 豊福 「四〇度を超えたとき」「三九度以上の高熱が三日以上続いたとき」「ぐったりして元気がないとき」「生後三カ月くらいまでの乳児の発熱」は要注意です。急いで病院に行ってください。
 池田 熱が出たときに、ひきつけを起こすこともありますね。
 豊福 「熱性けいれん」と言われるものです。息が止まり白目をむいて、体をこわばらせ意識を失う状態になります。三八度以上の熱が出たときに起きやすく、六歳くらいまでの子どもに多くみられます。
5  発熱・ひきつけ――あわてずに冷静な判断を
 池田 ひきつけを起こしたら、どうすればいいですか。
 豊福 衣服をゆるめて静かに寝かせ、吐いたものが、のどにつまらないように、できるだけ顔は横向きにします。大きな声で名前を呼んだり、体を揺すったりして刺激をあたえてはいけません。
 森田 タオルなどを口の中に入れる人がいますが、刺激で吐くことがあるので、何も入れないことです。
 池田 他に注意することはありますか。
 森田 あわてず気持ちを落ち着けることです。小児科の医師の間には、「ひきつけの子どもが来たら、まずはタバコを一服せよ」という教訓があります。
 池田 どういう意味ですか。
 森田 もちろん、実際にタバコを吸うわけではありません。ふつうのひきつけは五分以内におさまるんです。
 池田 つまり「一服している間に」おさまるということですね。
 森田 そうです。ですから、家庭で子どもがひきつけを起こしても、あわてることはありません。冷静に様子を見てください。
 実際、お母さんがあわてて病院に連れて来ても、診察室に入ったときには、子どもはスヤスヤ眠っていることが多いのです。
 豊福 ただ、五分以上おさまらないときは、やはり急いで病院に行く必要があります。子どもの病気には、つねに、お母さんの適切な判断、手際のいい対応が大切なんです。
6  釈尊時代の耆婆も小児科の名医
 池田 小児科と言えば、釈尊の時代にも、すでに小児科が独立してあったとされています。もちろん、今日のような専門的な分科ではないでしょうが、子どもの病気が、それだけ重視されていたということでしょう。
 釈尊の時代に名医として知られた耆婆は″小児を看る者″と呼ばれたという解釈もあります。たしかに耆婆は、子どもの腸閉塞の手術に成功したことで有名です。″小児科の名医″とも言えるでしょう
7  「おねしょ」は長い目で見て
 池田 わが子のおねしょで悩んでいる、お母さんも多いと思いますが。
 森田 たしかに多いと思います。しかし、それほど心配する必要はありません。尿の調節がうまくできるようになるのは五歳くらいです。
 小学生になっても頻繁におねしょをするのは、いくつかの原因が考えられますが、はっきりしたことはわかっていません。
 豊福 排泄のしつけが厳しすぎたという心理的な原因もあるようです。
 池田 治療法はあるのですか。
 豊福 残念ながら、特効薬はありません。尿の通り道の病気、ホルモンの異常などが原因の場合は、治療も可能なのですが。ただ叱っても、治るというものではありません。
 森田 親は「怒るな・起こすな・気にするな」、そして子どもには「安心・安眠・早起き」をさせると効果的とも言われています。
 池田 なるほど。親が不安になる気持ちもわかりますが、おねしょをしている子どもは、世界中にたくさんいます。そのほとんどが大人になる前に治る。ですから、長い目で見てあげることがいちばんの治療法かもしれませんね。
8  母こそ″名医″、励ましは百薬に勝る――安心感があれば吃音は治る
 豊福 そうです。叱ってばかりいると、今度は子どもに吃音(音声がどもること)が現れることがあります。
 池田 吃音も、親としては気になりますね。
 森田 これも、親が無理に治そうとして、叱ったりすると、たいていは、かえってひどくなります。
 池田 よく子どもに、「何?」「それで?」「早く!」と、機関銃のように話しかけるお母さんがいますね。あれでは、子どもでなくても言葉がつまります。(笑い)
 豊福 「子どもにはゆっくり話す」「子どもの話はじっくり聞く」ことで、ほとんどの吃音は自然に治ります。
 池田 子どもに安心感をあたえることが、大切なのですね。
 森田 そうです。吃音にかぎらず、子どもの病気の場合、母親の存在が大きいのです。「これはふだんと違う」と母親が直感したときに、検査で大きな病気が見つかることがあります。
 毎日、子どもと接し、その子の状態を知っている母親には、医師もかないません。
 池田 白樺会の方から、こんな話を教えてもらったことがあります。交通事故で意識不明になった娘さんを励まし続けた、お母さんの体験です。
 娘さんは、医師から回復の見込みがないと告げられます。しかし、そのお母さんは、「きっとよくなる」と、希望を捨てませんでした。
 来る日も来る日も、娘さんの体にふれながら、枕元で励ましを送り続けたというのです。「おはよう」「痛くないかい」「あと少しの辛抱だよ」。また故郷の特産であるミカンを、娘さんの顔の上につるし、手にふれさせたと言います。意識が回復したら、すぐに目に入るようにとの、お母さんの精いっぱいの愛情でした。
 豊福 お母さんの愛情には、かないませんね。
 池田 事故から約一カ月後、お母さんが、いつものように声をかけると、娘さんの目から涙があふれてきたそうです。続けて「頑張るんだよ」と声をかけると、みるみるうちに涙が流れ落ちました。意識がもどったのです。その後も、お母さんの温かい励ましによって、娘さんは次々と体の機能を回復したそうです。
 母の励ましは百薬に勝る。子どもにとっては、母こそ名医です。また、だからこそ、お母さん方が、正しい知識と賢明な知恵を身につけてほしいと思います。
9  肥満:まず「親の生活習慣」の点検から――生活習慣病は、子どもも食事と運動不足が問題
 池田 子どもの間にも、以前なら大人しか、かからないような生活習慣病が増えていると聞きましたが。
 豊福 糖尿病、高血圧といった病気が増えています。
 池田 大人の生活習慣病では、食事が大きな原因ですが、子どもの場合も同じですか。
 森田 はい。とくに問食、おやつが問題です。いつも口の中に何か入れているのでは、肥満になってしまいます。おやつは、三度の食事が十分にできるように、時間と食べる量を決めることが大事です。
 豊福 もう一つの原因は運動不足です。肥満の子が放課後、外で体を動かして遊ぶ時間を調べたところ、一日二十分もない子が圧倒的だったそうです。
 池田 たしかに最近の子どもは、外で遊ばなくなりましたね。
 森田 そうです。テレビゲームなどが、子どもたちを室内に引きとめています。指だけは、ものすごい勢いで運動しているようですが。(笑い)
 豊福 最近では転んだときに、手が出なくて顔から突っ込んでしまう子どももいると聞きます。また自分ではまっすぐに立っているつもりでも、まっすぐに立てない子や、ボールがよけられず、自分の目に当ててしまう子もいるそうです。
10  快適さが健全な発育を妨げる
 池田 快適で便利な生活が、かえって子どもたちの健全な発育を妨げているのでしょうか。子どもは社会を映す鏡です。歩けるところも車で行く、かみやすい食べ物をあたえる、冷暖房で室内を快適にする――子どもの快適な生活も、大人が生みだしたものです。肥満や生活習慣病になりたくてなる子はいません。子どもの生活習慣の形成は、家庭環境によるものが大きいのです。
 大人はある程度、自分の健康を自分で守ることができます。しかし子どもにはできない。″子どもの健康は親が守る″しかないのです。また″子とともに親がつくる″自覚が大切でしょう。
 そのためには、まず大人が自分の生活習慣を点検する必要がある。今は情報も、便利な道具も食べ物も自由に手に入る時代です。
 こうした時代だからこそ、子どもがすこやかに育つためには、「何が必要で、何がいらないか」を取捨選択しなければならない。親の知恵、大人の生き方が問われている時代なのです。

1
1