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日蓮大聖人・池田大作

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人間の魂に触れる詩 ホイットマン『草の葉』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
11  スエズ運河の開通、北米横断鉄道の完成、大西洋海底電線の敷設を記念して歌われた詩の一節である。わが民衆詩人は輝かしい近代科学の成果を讃えながらも、たんに物質的な繁栄のみでなく、これからの人類が東洋の精神文明に着目し、大いなる航海へ船出すべきだと歌いあげている。
 しかしホイットマン自身は一八七三年一月、五十三歳のときに突然の発作に倒れ、インドへの航海に出ることはなかった。晩年は外出も困難になった。彼は、今から百年前の一八九二年三月二十六日の早朝、肺炎がもとで七十二歳の生涯を閉じている。
 大洋に船出せんとしていたホイットマンが波瀾の生涯を終えた年、東京帝国大学の学生だった夏目金之助(のちに「激石」と号す)は、早くも「文壇に於ける平等主義の代表者『ウォルト・ホイットマン』の詩について」と題する論文を、明治二十五年十月の『哲学雑詩』に発表した。
 この論文のなかで「作者は是れ宛然たる一個の好詩人なるべし蓋し其文学史上に占むべき地位に至っては百世の後自ら定論あり」と、若き激石は記す。まさに「具眼の士」といえよう。詩人の没後百年を記念し、今秋(一九九二年)には創価大学にホイットマンの銅像が建つことになっている。

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