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日蓮大聖人・池田大作

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核時代と人類の運命  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

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10  アイトマートフ また他方では、かつてイスラム教が普及していった時代にも似た躍動感を復活させているイスラム文化が、大きくクローズアップされてきていますね。
 イスラム世界のこの変化に、世界はもっと早くから注目すべきだったのかもしれません。
 というのも、近年のイスラム圏の躍動感には、傷つけられた自尊心を裏に秘めた複雑な感情が混じっているからです。西側諸国は自分たちの文明を維持するために中東の石油に依存してきました。そしてそれが中東に巨万の富の蓄積を生み、富は中東の人々の自尊心を目覚めさせ、自信をもたせたわけです。よく理解できる心理です。貧乏人が急に金持ちになると、かつての侮辱を思い出すものです。まさにそのことが起こっているのです。
 このように、たんに大量殺戮兵器に反対すれば事足りる状況ではなくなってきています。その反対運動をつづけていくことはむしろ当然のこととして、さらに一歩進めて考えねばなりません。時代の要請は、国家にせよ個人にせよ、持てる大量殺戮兵器を使おうとする目的、原因に光を当て、その原因そのものを取り除いていくことにあるのではないでしょうか。
 私たちは次の二つの心理をよくよく理解しなくてはなりません。核兵器をはじめ、あらゆる大量殺戮兵器を前にして、人間が精神的無力感にむしばまれていることは疑う余地のない事実です。が、反面、民族主義とか民族的利益という観念は人間に恐いもの知らずの自信をもたせ、無分別な行動に走らせるという点も、決して見逃してはならないのです。では、どちらの精神状態がより危険なのでしょうか?
 さてそこで、「新思考」の勝利によって、一息つき、少し体の力を抜くことができるようになったと思えるかもしれません。しかしそこに新しい不幸が発生しました。私たちは、「冷たい戦争」が「熱い平和」にとってかわる現実的な危機に直面しています。というのは、以前は、東西両陣営の対立の中で、二つの超大国がいずれにしろそれぞれの軍事ブロックの中で憲兵の役割を果たしていましたが、今は事情が変わりました。もはや核兵器禁止の措置の有効性を信ずることは困難です。核兵器の拡散は事実であり、核兵器を所有している疑いのある国は少なくないからです。
 最近の地域的軍事衝突は三つに分類することができると学者たちは分析しています。それは、経済的不平等、民族・人種関係の緊張、国家主権によるものです。
 当然ながら、これらの理由はすべて篭のように編み合わされていて、その篭の中に私たちはすべて一緒になって入っているのです。

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