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日蓮大聖人・池田大作

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文学への初志  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

前後
13  そうした「女性」の目は「生活」の目であり「現実」の目、「人間」の目であるとも言えます。「人間」のよって立つ「生活」や「現実」が、空疎で声高なスローガンのもとに、どんなに脅かされ、踏みにじられてきたことか――人類史を振り返ってみると、その迷妄ぶりにそら恐ろしくなるほどです。
 私は“プロクルステスのベッド”を思い浮かべます。古代ギリシャの伝説的強盗プロクルステスは、旅人をおびき寄せて捕らえ、特殊なベッドに縛りつけ、背丈が長いときはベッドの長さに合わせて手足を切断し、短いときには強引に引き伸ばしたといいます。
 すべてにわたって「人間」が「ベッド」の寸法に合わせて切断されゆくさまは、イデオロギーやスローガンの名のもとに「生活」や「現実」「人間」が裁断され、犠牲にされゆく様子を彷彿させます。二十世紀は「戦争と革命の世紀」と言われますが、対独戦争やスターリニズムの嵐の中で膨大な犠牲者を出したソ連ほど、この世紀の悲劇的運命の荒波にさらされた国民もないと思います。
 もとより、太平洋戦争の惨禍を招いた日本も、例外ではありませんが、いずれにせよ、人類の歴史に宿命のようにまとわりついている“プロクルステスのベッド”という本末転倒は、何としても正していかなければならない。そこに、“人間主義”の復活という私どもの共同作業の意義があります。

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