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日蓮大聖人・池田大作

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科学における“個”と“全体”  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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7  人間の営為が志向すべき、個と全体の統一という概念はすでに太古の昔に表明されています。このことからみても、あなたのお考えが正しいのは当然です。ただ私が留意したいのは、そうした概念が特徴的なのはひとり仏教だけではないということです。それは、古来多くの哲学者によって表明されてきました。たとえば、古代ギリシャの大哲学者アリストテレスはこの分野で深遠な理念を発展させた一人でした。
 さまざまな分野の客観的現実における個と全体の調和ある相互関係についていえば、この問題に対して一義的な答えを出すことはできません。あらゆる現象において私たちは、個と全体との間に、調和した関係や、調和しない関係を見ることができます。全体を組成する個々の要素は互いに矛盾した行動をとります。まさにこの矛盾こそが安定した全体をもたらすのです。そのほか、全体が個と矛盾することもあります。個と全体に見られるこの矛盾は自然的な現実や社会的な現実における一切の発展過程に固有のものなのです。
 私たちは社会の発展のなかにこのような矛盾の最も鮮やかな実例を見ることができます。とりわけ、今日、一方で、人類は、現代社会の生活、物心両面の文化において起こっている激しい統合過程の結果、統一性なるものをかつてなく感じ、他方で、私たちはきわめて不当な現実を明白に見てとります。すなわち、巨大な科学技術力をもつ現代の文明世界において、十億を超える人々が極貧に生き、数百万人が飢えのために死んでおり、また初歩的な医療施設がないためにひどい生活環境におかれています。
 今日、私たちは、社会と自然の相互作用の調和が崩れた結果として、自然環境が取り返しのつかないほど破壊されるのではないかといった危惧を鋭く感じとっています。まさに今日、全人類を破滅させかねない戦争の危険が、とりわけ私たちを不安にさせています。

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