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日蓮大聖人・池田大作

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文化交流のあり方  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
17  私はかつてモスクワ大学を訪問したさい、「東西文化交流の新しい道」と題して講演し、そこで「民族、体制、イデオロギーの壁を超えて、文化の全領域にわたる民衆という底流からの交わり、つまり人間と人間との心をつなぐ“精神のシルクロード”が、今ほど要請されている時代はない」(本全集第1巻収録)ということを申し上げました。そして「いかに抜きがたい歴史的対立の背景が存しようとも、現在に生きる民衆が過去の憎悪を背負う義務は全くない。相手のなかに“人間”を発見した時こそ、お互いの間に立ちふさがる一切の障壁はまたたくうちに瓦解することであろう」(同前)と述べました。
 人間と人間の間にある障壁は、すべて幻想にすぎません。民族的敵意や人種的差別や、それら一切はすべて人間の心がつくりだしたものであり、真実の障壁は自分の中にこそあることに私たちは気づくべきです。私たちは、心の中にあまりにも多くの色メガネをもちすぎています。これをまず取り外さなければなりません。そして、ありのままに、相手の人間を見ることです。すなわちイデオロギーや政治性で見るのでなく、まず人間自身を直視すべきであると思います。
 その意味で私は、今日、人類が最も必要としているのは、ヒューマニズムであり、人間を人間として見ることのできる眼を育てる「人間学」であろうと思います。
 ログノフ 人間関係の歴史は漸進的なプロセスです。今では数千キロの距離も人々の交流の妨げにはなりません。たとえば、モスクワで機上の人となり、そこで夕食をとり、翌朝には東京で朝食をとる時代です。諸国民間の接近の速度もこのような速さに負けてはならないはずです。
 しかし、すべてが満足とは今のところいえません。今もって、ある人々は、力だけが一切の解決を可能にすると考えています。こうした考えはその人が知的発達の点で未開人と大差ないことを意味します。でも私は人間の理性を信じ、ゴルバチョフ氏が根気づよく呼びかけている新しい政治的思考を、そして究極的には理性が勝利することを信じます。
 人類は唯一正しい選択をすることでしょう。そして諸国民間の交流を妨げるようないかなる政治的冒険も人々を互いに近づけ、進歩と和合に導く「シルクロード」から人間をそらすことはないでしょう。

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