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日蓮大聖人・池田大作

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現代における共同体の意義  

「社会と宗教」ブライアン・ウィルソン(池田大作全集第6巻)

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11  現代の世界で、共同体的な価値を提供することができる唯一の機関は、おそらく宗教集団であり、ことに強く帰依している人々からなる宗教集団――すなわち、通常の、深く考えることなく行われていく日常生活のパターンから、意識的に離れて存立しているセクト的集団――でしょう。
 ところが、こうした集団も、まったくさまざまに異なる道徳的・社会的行動の基本原則が行き渡っている、より広い社会的枠組みの中で機能せざるをえません。テクニカルな決まり事で動く非個人的で世俗的な社会体系と、情緒的な宗教的共同体の間の緊張は、依然として解消しないままなのです。
 現代の社会では、このような共同体を樹立したり維持することは、容易ではありません。そこでは、仕事上の要請、現代の社会・経済・政治の各組織、教育、福祉、そしてレクリエーションなどのすべてが、共同体的なパティキュラリズム(特殊主義)とは対照的な仮定に従って動いているからです。
 宗教運動にもまた、現代社会に支配的な組織や機構の形態に自らを適合させようとする、顕著な傾向が出てきています。この傾向は、アメリカで特にはっきりとしており「宗教の内的世俗化(インターナル・セキュラリゼイション)の過程」と呼ばれています。しかし、そうした過程にも、真の宗教的要素が存続するためには、これ以上は進めないという限界があると、私は思います。
 今日、宗教は、緊張した不安定な境界をともなう技術的世界の合理性と向かい合っています。その緊張はどのようにすれば解消されるのか、私たちには、いまのところ知るすべもありません。

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