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人生問答 日本の進路

「人生問答」松下幸之助(池田大作全集第8巻)

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26  地方自治の強化策
 松下 現在、日本では三割自治という言葉もあるように、中央集権的な性格がきわめて強いようですが、これが一面、地方格差を生み、国全体としての発展をアンバランスなものにしていると考えられます。そこで、日本を八〜十の大きなブロックに分け、これをかりに州として、行政の主体をその州におき、独立性の高い、いわば″七割自治″という姿で国家の運営を行なえば、地方格差も是正され、調和ある発展も生まれてくるのではないかと愚考するのですが、いかがでしょうか。
 池田 地域の開発、発展、中央と地方の格差是正は二十数年来の課題として検討されてきたもので、昭和二十五年に制定をみた「国土総合開発法」もバランスのとれた地域の繁栄という考えが、その根底にあったのです。
 ところが、経済が戦後すさまじいばかりの復興、繁栄を遂げているのに、政府の適切な施策がなかったために、この法も、″仏つくって魂入れず″のまま放置されてきたのが実態です。その結果、当初描かれた青写真とは似ても似つかぬアンバランスを現出してしまいました。ご指摘のとおり、ここで抜本的な対策を案出し実行しなければ、この格差は日を追い年を追って広がっていくことは目にみえて明らかです。
 まず、今日の地方自治の実態についていえば、中央政府の指令を地域に伝える指令伝達機関の域を出ないようです。少なくとも議会の視線は地域の庶民に向けられるよりも中央のほうに向けられているほうが多いといえましょう。地方の条例一つをとってみても、中央から条例の準則が各地方にまわり、地方はそれを基本として条例を作成していきます。多少の地方の色合いというものが織り込まれはするものの、地方独特の習慣や風土、地域住民の生活というのは補完的な意味しかもたない条例が制定される危険が非常に強いのです。これでは地域に見合った開発、発展ができるわけがありません。
 もともと地方政治は中央の政治とちがって、住民がみずからの生活権を守るというみずからの意思と行動によって直接参加することが主眼としてあったのです。その意味からは、住民の、住民による、住民のための政治機構として、まさに″自治″でなければならないはずです。それが住民と遊離し、国家つまり中央の権限のもとに制約されながら機能せざるをえないという今日の実情は、まさに地方自治の形骸化であり、民主主義そのものの土台を危うくするものであるといわざるをえません。
 そして地方自治の形骸化は、地域のもっている特徴を消滅させることになり、その結果、一面では文化の画一信に陥るとともに、他面、経済のうえではアンバランスな格差を生みだしています。この事実に目を向けられて、イ一割自治″から″七割自治″への転換を提唱されているのは私も大賛成です。日本を大きなブロックに分けて州制にするということも、新たな改革案だと思います。今日のように、これだけアンバランスな地域格差、そして画一的な中央からの指令系統が弊害の根源になっているのをみますと、真剣に論議されてよい政治形態といえましよう。
 したがって、私はご意見には賛意を惜しまぬものですが、これについても注意せねばならないのは、それが形のうえだけの州制というのであっては状態は少しも変わらないばかりか、むしろ混乱を招く恐れが十分に考えられます。地方自治を住民の手に取り戻すには、住民の目覚めた意識が原動力となり、自然に州制を志向するという時代の潮流となってくることが大切であると思います。

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