Nichiren・Ikeda
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社会を見る目
「人生問答」松下幸之助(池田大作全集第8巻)
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28 オカルト・ブームと社会
池田 ひところのオカルト・ブームについて、どのようにお考えですか。また、このブームは日本だけではなく、世界的現象のようですが、それはどのような社会的背景をもつとごらんになりますか。テレビで放映され、話題を呼んだような超能力を、どのように受けとめておられますか。
松下 ひところ、念力とか、そういったいわゆる超能力によって、スプーンを曲げるというような、不思議な現象が、テレビなどに映されたりしていろいろ話題を呼んだようです。
このようなものは、過去の歴史をみても、しばしば流行するように思われます。健全な常識では判断できないようなことが、ことさらに吹聴されたり、理論づけられたりするような世の中というものは、今にはじまったことではありません。ずっと昔から、その時代その時代の程度に応じてつきまとっていたように思います。
私は、ああしたものが真実性をもつという見方はしていませんし、そうは信じたくありません。もちろん、過去、キリストのような人も出ているのですから、ごくまれにそういう超能力をもつ人があるかもしれないことは否定しませんが、しかし、ふつうの人間が自然の理法にかなわないような力をもつことはありえないと考えていいのではないでしょうか。最近のオカルト・ブームのような摩訶不思議な力は真実には存在しないと思います。
それでは、どうしてこのようなブームが起こってきたのか、それも日本だけでなく、世界的に起こっているのかということですが、これは多くの人が指摘しておられるように、世界的に、不安、動揺、混乱といった状態になってきているからだといえましょう。たとえば石油問題です。今回の石油問題は、産油国が申し合わせて価格をつりあげたわけです。そのつりあげ方が誰がみても妥当だというものならいいのですが、いっぺんに四倍も上げるという、常識では考えられないようなものです。そして、そういうものが通ってしまうというところに、今日の世界の混乱、混迷があるわけで、そこから人心の不安、動揺も起こってきます。
そのような世相を背景に、超能力という現象が真実らしく伝えられ、それが話題を呼んでオカルト・ブームになったのだと思います。最初にものべたように、過去にもたびたびこうしたことはあったわけで、それはやはり、社会なり人心が不安定な時代に起こっていると思うのです。
ですから、やがて社会が安定してくれば、こういうことも少なくなってくるのではないでしょうか。