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日蓮大聖人・池田大作

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第24巻 「灯台」 灯台

小説「新・人間革命」

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57  灯台(57)
 山梨県・勝沼町から勤行集会に参加した果樹農家の坂守太郎は、ブドウ畑の一部を整備し、観光ブドウ狩り園を営んでいた。
 観光客が足を運び、ブドウ狩りを体験してもらうことで、生産者と消費者の交流も生まれ、それがブドウの販売促進にもつながると考えたのである。
 勤行集会で″地域の灯台″になろうと決意した坂守は、地域活性化の方法を、真剣に模索し始めた。そして、果実の栽培と観光が一体化するなかで、勝沼の新たな道が開かれるとの確信を強くしたのである。
 そのために、自分のブドウ狩り園を成功させ、モデルケースにしようと誓った。休憩所や売店、大駐車場もつくって、施設を充実させた。また、人びとのブドウの好みも多様化していることを知ると、巨峰をはじめ、三十余種を収穫できるようにした。
 さらに、お年寄りや障がいのある人も楽しめるように、車イスに座って手が届く高さのブドウ棚を用意した。一方、高いところの好きな子どものために、ハシゴを使って収穫するブドウ棚も作った。インターネットのホームページも立ち上げ、ブドウの生育状況の情報発信や販売にも取り組んだ。
 日々工夫であった。日々挑戦であった。
 坂守のブドウ狩り園は好評を博し、地域発展の牽引力になっていったのである。
 彼は、勝沼町観光協会の副会長や、地域の果実出荷組合の組合長なども歴任し、まさに″地域の灯台″となったのだ。
 あきらめと無気力の闇に包まれた時代の閉塞を破るのは、人間の叡智と信念の光彩だ。一人ひとりが、あの地、この地で、蘇生の光を送る灯台となって、社会の航路を照らし出すのだ。そこに、創価学会の使命がある。
 「日常生活のなかでの信仰実践と、よりよい人間社会を建設していく努力を続けていくことこそ、本来の宗教の使命である」とは、英国の宗教社会学者ブライアン・ウィルソン博士の、宗教者への期待である。

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