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日蓮大聖人・池田大作

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第10巻 「幸風」 幸風

小説「新・人間革命」

前後
47  幸風(47)
 役員の撮影は、二グループに分かれて行われた。
 山本伸一は、一人ひとりに視線を注ぐように、撮影台に立つ青年を見上げながら語った。
 「お休みの日曜日に、朝早くから、陰の力として頑張ってくれた諸君に、心から感謝いたします。
 ありがとう。また、ご苦労様です。
 最高の王者とは誰か。常に民衆を守りゆく人です。
 最も尊い人は誰か。大切な仏子のために、黙々と汗を流した人です。
 ゆえに、役員の皆さんこそ、一番、尊敬すべき方であり、私は、最大の敬意を表して、皆さんと写真を撮ります」
 最後のフラッシュが閃光を放った。
 実に、四時間五十五分を費やし、五十グループにわたる撮影会は、午後五時前に終了した。
 閃光を浴び続けたせいか、伸一の目は痛み、目を閉じても、炸裂する光が瞼の裏に点滅していた。
 発熱に苛まれながらの記念撮影であったが、それに気づいた関西の同志はいなかった。
 彼は、翌日には、舞台を名古屋に移し、愛知県の班長、班担当員一万二千人と記念のカメラに納まった。
 以来、班の幹部をはじめ、組織の最前線の同志との記念撮影は、約十年にわたり、北は北海道から、南は沖縄の宮古島、石垣島まで、全国各地で行われたのである。
 その間、伸一は、激務のために、何度か、体調を崩したが、走り続けた。
 最愛の同志とともに、カメラに納まり、刹那に永劫をとどめんと。励ましの言葉を贈らんと。
 広宣流布とは、全同志が獅子となって立ち上がってこそ、初めて成就できる聖業である。
 ゆえに、伸一は、同志の心の暖炉に、永遠なる「誓いの火」を、「歓喜の火」を、「勇気の火」を、断じて、ともさねばならないと決意していたのだ。
 石と石とがぶつかり合うなかで、火は生まれる。広宣流布の火もまた、人間の魂と魂の触発のなかからしか生まれないことを、伸一は熟知していた。
 写真撮影の、どの会場にも、伸一との、生命の熱い交流のドラマがあった。
 多くの同志は、今なお、その写真を大切に保管し、感動をもって口々に語る。「生涯の宝」「人生の誓いの原点」と。
 そして、記念撮影を通して彼が結んだ、数十万の同志との魂の絆が、新しき広布の飛翔の原動力となっていったのである。

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