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第14回「SGIの日」記念提言 新たなるグローバリズムの曙

1989.1.26 「平和提言」「記念講演」(池田大作全集第2巻)

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1  第十四回「SCI(創価学会インタナショナル)の日」を記念し、最近の私の所感の一端を述べて新たな出発としたい。
 SGIが一九七五年に発足して、昨年で十三年が経過しました。私どもはちょうど二〇〇一年への折り返し点に立ったわけであります。この間、各国メンバーの労苦をいとわぬ日々の活動により、今や揺るぎなき平和勢力としての基盤ができあがりつつあることはまことに喜ばしいかぎりであります。
 自国の歴史や文化、風俗を大切にし、その国のよき市民としてそれぞれの社会の繁栄に貢献してきたメンバーの努力が、着々と実りつつあることを実感するきょうこのごろであります。
 昨年、ブラジル政府公認の表彰団体であるブラジル教育統一協会からブラジルSGI(BSCI)に最高栄誉の「文化・教育功労大十字章」「グラン・オフイシャル章」「コメンダドール章」の三功労章が贈られました。
 これは昨年六月に行われた日本人の移住八十周年の記念式典における″一万人の人文字″の活躍など、ブラジルSGIのこれまでのブラジル社会での教育・文化への多大な貢献を称えて授与されたものであります。
 また、アメリカ連邦議会からは「青年平和国際賞」を授与されました。これは私個人に対する表彰ではありますが、同時にアメリカ社会の健全な発展と青少年の育成に尽力してきたアメリカSGIの社会貢献の労が認められたものでもあります。これはSGIの平和・文化・教育の路線が評価されたものと受けとめております。
 また、インドでは国際平和非暴力研究所から「国際平和賞」が贈られました。
 更に昨年八月にはシンガポールの独立記念日を慶祝する国家行事の「パレード」にシンガポール創価学会(SSA)が公式招待され、五千人のメンバーが華麗な演技で晴れの盛儀を飾り、独立記念日パレードの実行委員会から感謝状をいただいております。
 ここに幾つかの例を挙げましたが、各国各地域で様々な形でSGIメンバーの社会貢献の姿が見られる。
 こうした実績が積み重なるのを見るにつけ、SGIの運動が社会から深く認識され、それが定着してきたことを実感するのであります。
 私どもはこれからも世界の恒久平和の実現と人間文化・教育の興隆を目指す活動を更に自信をもって推進していきたい。私自身、各国の友の激励とともに、民衆の側からいかにして平和の基盤を強化しうるかという年来の使命を果たすべく、本年も可能なかぎり世界を回るつもりであります。
2  建設的対話で不戦の流れを
 人類は今、新しい時代への″大いなる過渡期″を迎えている気がしてなりません。それは、文明史的に見れば、ポスト(後)産業化社会にどう備えるかということになりますが、国際政治のうえからも、ここ数年のドラスチック(急激)な動きは、戦後長きにわたって世界に君臨してきた米ソ間の冷戦構造が崩壊しはじめたことを示しております。
 また、過渡期という点からいえば、新しい軍縮の流れが始まったという明るい展望がある一方、科学技術の進歩はより破壊力の大きい兵器を生み出すことを可能にしているとの警鐘も鳴らされております。現実は軍縮と軍拡の動きが混在しており、その綱引きが行われているというのが正確な見方といえましょう。
 二十一世紀まであと十余年、私どもはこの残された期間で、二十一世紀を迎える準備を整えねばなりません。いわば二十世紀の総仕上げの時を迎えており、それだけ既成の枠組みにとらわれないダイナミックで柔軟な発想と対応が要請されております。
 何よりも現代が″大いなる過渡期″を迎えているというゆえんは、戦後四十数年以上にわたって世界の政治構造の機軸となってきた米ソの二極体制、すなわちヤルタ体制が大きく揺らぎ、世界は多極化の中で混迷の度を深めているからであります。
3  旧知のキッシンジャー米元国務長官は、十数年前、世界は、軍事面では米ソ二極体制だが、経済面では、米国、ソ連、中国、日本、西ヨーロッパの五極体制化しており、政治面で見れば、更に多極化していると指摘しました。昨年、日本でも出版された話題の書『大国の興亡』(鈴木主税訳、草思社)でも、ポール・ケネディ教授は、この五極体制論を受けて、論を展開しております。軍縮の流れが進めば、こうした多極化現象が更に加速していくことは間違いありません。
 問題は、多極化現象がはらむ善悪両面であります。すなわち、それは一方では新たな世界秩序形成への助走たりうると同時に、他方、対応を誤ると、救いようのないカオス(混沌)を招き寄せてしまうからであります。「パックス・ルッソ・アメリカーナ」(米ソによる平和)は、力によるものであり、ほころびだらけのものでしたが、それなりの一つの秩序であったという側面は否定できない。その体制が揺らぎ始めるや否や、タガの外れた桶から水があふれ出るように、多くの不安定要素が生まれてくることは道理であります。
 こうした地殻変動的な揺れをそのまま放置しておくとT・ホッブスの「万人の万人に対する戦い」ではありませんが、世界は、無政府状態のカオスになりかねません。今、必要なのは東西、南北の古い枠組みを超えた相互依存の新たな世界秩序のシステムを作り出す構想力でありましょう。そこに、人類史の直面する最重要課題があるといってよい。

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