Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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ニコラエフ初代大統領 シベリアの大地溶かす”サハ共和国の熱き心”

随筆 世界交友録Ⅲ(池田大作全集第124巻)

前後
6  未来の人材を! そのために教育を
 大統領は叫ぶ。
 「指導者は、手にマメを作って働け!」
 みずから、どとにでも出かける。工場へ、飼育場へ、野営の場へ。
 腰が軽い。こまめに人と会い、問題への答えを一緒になって見つけていく。
 大統領は、徹底した現場主義なのである。
 共産主義の悲劇。
 官僚主義の悲劇。
 それは、「現場から遠く離れた」指導者が、もたらしたことを骨身にしみて知っているからだ。
 から回りする議論また議論!
 住民のことなど考えず、自分たちの出世のことしか頭にない党のエリートたち!
 「私は、書斎や図書館で生まれた空想的な考えに反対であり、抽象的な設計やプランに反対であり、現実の生活を犠牲にするイデオロギーに反対である。
 それとは逆に、つまり人間から出発した国の政治は、この具体的な必要、需要、関心、問題から出発すべきであると信じている」(同前)
 人間から出発せよ!――この大統領の言葉に、だれもが喝采を送るだろう。
 私は大統領に申し上げた。
 「いかなる国も流転します。『永遠の栄え』もないし、反対に『永遠に小国』ともかぎらない。
 今、どんなに栄えていても、傲りたかぶった国は、いつか必ず堕ち、衰退していきます。反対に、今、謙虚に、まじめに苦闘し、建設に向かう国は、将来、必ず栄えていきます。
 貴国が、このまま行けば、何十年か先、二十一世紀の中ごろには、どれほど偉大な国となっておられるか。そのときに、大統領は、祖国の発展をもたらした『象徴』と輝いてください!」
 大統領は、にこやかに、うなずきながら聞いてくださった。
 ニコラエフ大統領がサハ共和国の発展のために、最も必要だと考えているもの。それは「資源」だけではない。それよりももっと大切なのは、「人材」だと確信しておられる。
 共和国の予算の何と三二パーセント以上を、教育にあてているという。
 こう語っておられた。
 「人間は『教育』を通して、初めて自分が人間であることを認識します。
 『教育』を通して、初めて各民族が、独自性、伝統・習慣を維持できるのです。
 私たちは、サハ共和国の新しい発展の枠組みをつくるうえで『人道的価値の創造』を重視します。われわれの未来は『人間』で決まります。それも教育を受けた、調和と教養のある人間によって――。
 何百年もの間、しいたげられた人々に、「さあ、頭を上げよう! 自分たちの力を証明しよう!」と呼びかけておられるのだ。
 「十年間で学生を二倍にする」という目標を、二年も早く達成したこともうかがった。
7  民衆の力は大音響の流氷のごとく
 「民衆の力は、流氷のごとし」と言う。
 五月ごろ、広大な大河に張っていた厚い氷が、一気に流氷となって流れ始める。
 そのとき、巨大な氷の塊が大音響を響かせるという。
 大挙して氷が流れゆく圧巻のドラマ――それは、だれ人にも止められないエネルギーである。
 そして今、民衆の時代への奔流が動き始めた。
 ニコラエフ大統領は、自分の「夢」と「希望」について、こうつづっておられる。
 「人びとが喜び、笑う顔をぜひ見たいものである。
 どの家も満ち足り、各人が気に入った仕事を持つ時、人が自分の労働の成果に満足し、明日が信じられ、子供たちが自分の暮らす土地に誇りを持てる時、その時こそ、私の希望はかなったと言える」(同前)
 地上で最も寒い地に生きる人々――しかし、そのハートは、やけどするほど熱いのである。

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