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日蓮大聖人・池田大作

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女子部夏季講習会 悠久の幸福を構築

1972.8.10 「池田大作講演集」第4巻

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4  歴史を変えた一女性の力
 次に、アメリカの奴隷解放を訴えた有名な「アンクルトムの小屋」の著者ストウ夫人の例をとおして、女性の力の偉大さについて一緒に考えてみたい。
 彼女はごぞんじのようにオハイオ州に住む貧しい牧師の妻であった。また、四人の子供がおり、家事に追われる忙しい日々を送っていた。しかし、そのなかでストウ夫人は、奴隷制度の残酷さをつぶさに観察していたということであります。オハイオ州はいわゆる自由州で、奴隷制度はとられていなかったが、川ひとつ隔てたケンタッキー州には、非道にあえぐ多数の奴隷がいたからであります。
 彼女の家は結婚当時は、南部から北部の自由な諸州へ逃亡する奴隷たちの、一つの拠点になっていたといわれる。一度などは、かくまっていた奴隷を元の所有者が捜しにきたため、武装した夫と弟がホロをかけた馬車にその奴隷を乗せ、安全なところまで運んだということも知られております。
 こうした奴隷制度の悲惨な実態に、彼女の胸には正義の怒りがわき起こった。やがてそれは、奴隷制度の実態を書いて必ず世間に訴えるという、誓いにまで深化していった。「私は書く、必ず書いて世間に訴える」と彼女は叫んだ。
 そうして彼女は、生まれてまだまもない子供の死という悲しい事態をも乗り越えて、ついにペンをとった。黒人の不幸、悲憤と、奴隷制の非人間性を劇的に描いたこの小説は、アメリカはもちろんのことイギリス、フランス等々においても人々の心に激しい衝動を与えずにはおかなかった。正しい、先駆のものに対してはつねに非難、中傷があるように、この作品に対しても文学的に劣っているとか、事実関係に誤りがあるとか、さまざまな非難が浴びせられたわけであります。
 しかし、平凡な家庭の一主婦が家事の合間に書いたこの小説が、現実にアメリカ全土を揺り動かし、南北戦争、そして奴隷解放の大きな要因の一つとなったことは事実であります。かのリンカーンが初めてストウ夫人に会ったとき「なるほど、あなたがこの大戦争を起こした可愛い女性でしたか」と、声をかけたというエピソードが残っているほどであります。
 結局、ストウ夫人にこの偉大な小説を書かせたものは、彼女の心より出た正義感、使命感ということができる。とともに、彼女の父が神学校の校長であり、夫も弟も牧師であった。したがって、思想的、精神的に強固な支柱があったことも見逃すことができない。
 そして彼女自身、黒人問題に関する本をふだんから読んでいた。そのうえで逃亡する奴隷を助けるなど、この問題に真っ向から取り組む実践を積み重ねていた。ゆえにあれだけの本ができた、と推察されるのであります。
 こうしてみると、皆さん方の生き方とひじょうに共通する面が、少ないように思える。すなわち、無名であり、平凡であり、無力である。しかし、無力のように思えても、妙法をたもった皆さん方のたゆまざる地道な実践の持続こそが、いまは目に見えなくとも、底流においては社会を動かし、新しい歴史をつくり、偉大な業績を残しているということを、どうか確信していただきたい。(大拍手)
5  唱題に励み生命を浄化
 最後に御義口伝の「又浄明鏡の如しの事」の一節を拝したい。
 「六根清浄の人は瑠璃明鏡るりみょうきょうの如く三千世界を見ると云う経文なり、今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者は明鏡に万像を浮ぶるが如く知見するなり、此の明鏡とは法華経なり別しては宝塔品なり、又は我が一心の明鏡なり」云云。
 六根清浄とは、眼、耳、鼻、舌、身、意の六根が清浄であるということで、一言でいうならば、生命の浄化ということであります。今日、生命の浄化は題目を唱えていく以外にありません。その清らかな生命の人は、瑠璃明鏡のごとくこの現実世界を正しく知見していけるという御文であります。
 この御文のなかの「別しては宝塔品なり」――宝塔品とは大御本尊のことであります。「我が一心の明鏡なり」とは生命じたいのなかに鏡があるという意味であります。したがって御本尊が明鏡であるとともに、わが生命のなかにも明鏡がある。そして御本尊と境智冥合することによって、生命の鏡がみがかれ、光り輝いていくことができる、との御金言であります。
 また「所詮しょせん浄明鏡とは色心の二法、妙法蓮華経の体なり浄明鏡とは信心なり」とある。結局、浄明鏡とは色心の二法、妙法華経の体、すなわち生命そのものの本体である。更に色心ともに輝かしていく、その根源は信心しかない、との意味であります。
 信心を根幹とした色心の二法の活動が反復、持続し、高められ、そこに胸中の鏡があらわれ、人生、家庭、社会のことまでも正視眼で見ぬいていくことができる、そしてもっとも確かな人生道を進んでいくことができる、という原理を教えられているのであります。
 どうか皆さん方は、生涯、麗しい人間の絆で結ばれて、激励しあい、価値ある充実の日々を歩んでいただきたい、ということを申し上げて、私の話とさせていただきます。(大拍手)

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