Nichiren・Ikeda
Search & Study
3 昭和二十八年の秋のことであった。信濃町の学会本部の第一応接室にて、戸田城聖は、とある初老の人と対面していた。戸田に呼ばれて、若き伸一もに腰をかけた。戦時中、戸田城聖を取り調べた元司直である。
彼は、最近入信したという。戸田に馴れなれしく、笑いながら、入信の経緯を語っていた。戸田は、淡々とあいづちを打っている。やがて彼は「戸田さん、過去は過去ですよ。何か私にできることがあればしてあげましょう」いまだ、傲慢な態度である。戸田は、毅然としていいきった。「必要ない。時代が変わったからといって、君に頼むものは学会には断じてない。私にへつらっていれば、私がいい気になると思ったら大間違いだ。学会は純粋な信仰で、一切を切り開いてゆく」
伸一は彼を玄関まで、礼儀深く送つていった。
4 暖かな春が、今日も、また一歩近づいてきた。可憐な″忘れな草”も″さくら草”も、冬に耐え春を待つていよう。