Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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2 行動だけが「平和」を創る  

「希望の選択」ディビッド・クリーガー(池田大作全集第110巻)

前後
6  対話の積み重ねで「平和の大道」は開かれる
 池田 所長がご指摘のように、現実変革のためには民衆の力強い連帯が欠かせません。
 ですから私は、永遠に崩れることのない民衆の一大平和勢力を何としても築こうと、世界を駆けめぐってきました。"対話"は一見地味なものかもしれませんが、真に人間を変えるのは魂と魂が響きあう対話の力です。「千里の道も一歩から」で、対話の積み重ねのなかから平和の大道も開かれていくと、私は確信し、実践もしてきました。世界の善なる人々のネットワークを広げようと、国や民族を超えて、人間という同じ立場で忌憚なく語りあい、友情を結んできたのです。
 クリーガー 池田会長が平和への具体的行動とともに対話を推進してこられたことは、よく存じております。対話は、さまざまな視野と経験をもつ人々と理性的に話しあうことによって、世界についての理解を広げる重要なものです。私が、一九七〇年代の初めの二年間をすごした「民主公共機関研究所」における研究活動は、対話を中心としたものでした。そこでは、時局の緊急問題を討議するために、専門分野の異なる十五人から二十人の参加者を集めて、対話を行ったのです。
 しかし、その研究所での問題の一つは、参加者の経歴と立場が、実際のところ、十分に多様な広がりをもつものでなかったことでした。重要と思われる観点の多くは、参加者の意見の違いとなって反映されることもなく、真の対話にはなっていなかったのです。
 池田 つまり、立場や考えの違いが、さほど変わらなかったために、対話がもつ創造性が思ったほど発揮されなかったということでしょうか。
 クリーガー ええ。そもそも対話という以上は、さまざまに異なる文化の領域にわたることが重要となるでしょう。会長はこの点をかねがね重要視され、実行してこられたと、私は理解しております。"困難な問題に取り組むには、まず対話がよき第一歩である"との会長の信条に、私は強く賛同します。
 時には対話が、すぐに答えを導き出せないこともあるでしょうが、むずかしい問題に光を投じる形で問題の焦点を浮かび上がらせる方法として、対話は相互理解を進める役割を果たすものなのです。
7  変革は時代の必然
 池田 そこで所長におうかがいしたいのですが、これまで平和のための行動を続けるなかで、もっとも勇気づけられたこと、うれしかったことは、どのようなことでしたか。
 クリーガー 喜ばしいことに、最近はいくつかの重要な点で世界に変化が起きており、私は意を強くしています。国家間の戦争の数は減少し、生物・化学兵器の禁止についても前進がありました。長らく続いた冷戦も終わりましたし、核軍縮への前進もいくらかありました。
 そしていくつかの独裁政権が、より民主的な統治形態に交代しました。これらはすべて明るい兆しです。まだまだ十分ではありませんが、これらは小さな変化ではないことも事実です。私たちの住む世界が、このままの状態で続いてよいはずはありません。何よりも私は人類に対する"核の脅威"を終わらせたいのです。そして、紛争解決の手段としての戦争がなくなることを望みます。
 これらは、ただ「そうすべきだ」と声をあげるだけでは達成できません。だからこそ、私は行動を呼びかけてきました。私は、全身全霊で取り組んだ運動に前進の兆しが見えた時、たとえそれが小さなものであっても、いちばん幸せを感じます。
 池田 所長が言われるように、時代は着実に変わってきています。
 第二次世界大戦後まもなく、東西冷戦のイデオロギー対決が激化するなかで、師の戸田会長が「地球民族主義」という理念を提唱したとき、多くの人々が夢物語だと笑いました。しかし今日では、民族主義や国家主義を、どう乗り越えるかが、世界が直面する課題となってきているのです。「現実的でないから」と安易に現状追認をするのは、惰性におちいった思考法です。たんに「今まで不可能だったのだから、今後も不可能である」と考えることは、正常な判断を停止していることにほかなりません。
 大切なのは、"変革は時代の必然である"との確信にもとづく行動でしょう。時代に合わない無用なものであり、有害なものであると人々が判断すれば、奴隷制やアパルトヘイトが消滅したのと同じく、軍備をなくしていくことも、まったく無理な話ではないと思います。国際世論の高まりを受けて、「対人・地雷全面禁止条約」がわずか一年たらずで成立をみたように、核兵器廃絶も不可能ではないし、むしろ私たちはその道を開いていかねばならないでしょう。
 クリーガー それこそが私の意図するところであり、目標であり、最大の望みです。
 それは可能であり、そして人類の未来の安全にとって必要なことなのです。私たちの時代における最大の挑戦であり、全人類にとって必要なことなのです。それは、全人類にとっての真の転換点になると、私は考えています。
 私たちに選択の余地はありません。この現代の最重要の問題に対し、行動を起こすのみです。

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