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日蓮大聖人・池田大作

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後記 「池田大作全集」刊行委員会  

「世界市民の対話」ノーマン・カズンズ(池田大作全集第14巻)

前後
14  そして、なぜ平和にとって「希望の力」がそれほど重要なのか。それをカズンズ氏は被爆四年後の広島の復興のなかにいて実感する。「まさに地上の最大の力、戦争のためのいかなる装置や爆発物よりも偉大な力、それは、生きぬく意志であり、希望を受け入れる人間の能力である」との言葉に、氏の思いが率直にあらわれている。
 希望の力は無力感と対極にあるものであり、無力感こそ平和の敵である。だからこそ、無力感、絶望感におちいっていた広島の被爆女性や、ポーランドの女性たちを、希望の大切さにめざめさせる試みに、氏は全力をあげたのである。
15  名誉会長はカズンズ氏と三度会談している。アメリカの最も良質なヒューマニズムの体現者といわれるカズンズ氏だけに、会談の雰囲気はきわめて人間的なあたたかさに満ちたものだったという。そして、最初の会談のなかで氏は「結論的に言えば、人間の可能性を尊重することこそが最も重要だということです。人間はいまだかつてなされたことのないことをやれる、大きな能力を秘めている。この力をわれわれは尊敬しなければならない」と強調した。これに対し、名誉会長は、氏の思想には仏法の見方に通じる点が多いとし、深い共感の思いを吐露している。さらに名誉会長は最初の会談の思い出を後日、「カズンズ博士の目が、鷹のように鋭く、それでいて菩薩のように深くあたたかかった」と述べている。
 氏はみずからの宗教的信条を深く胸に秘めて、ふだんは決して、それをストレートに語ろうとはしなかった。しかし、誠実無比の人柄と、人間、宇宙、死、生命、人類、理性などへの深い思索と発言には、その内面に秘められた宗教的信条が、たくまずしてにじみ出ていたといえよう。そこに、両者の深い共感が生まれたのではあるまいか。
16  二十世紀という時代がやがて幕を閉じようとしている。多くの戦乱、紛争が人々を打ちのめしてきた時代。膨大な人命が失われてきた世紀。そしてついに人類絶滅の兵器を手にしてしまった世紀。この時代から、われわれは何を教訓として学びとったらいいのか。それは新しい世紀を指呼の間にした人類の大きな課題である。
 二十世紀という激動の時代にあって、あらゆる困難に屈せず、みずからの信念に生き、理想を追いつづけたポーリング、カズンズ両氏の発言から、われわれは大いなる教訓を学びとることができる。その並はずれたスケールの大きさから、こうした人物は現れがたいことを思うと、池田名誉会長が時を得て対談を編んだことの意義を思わずにはいられない。とりわけ、二十一世紀、「生命の世紀」へ羽ばたく青年たちに、本全集に目をとおしてほしいと願うゆえんである。
     一九九八年五月二日

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