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日蓮大聖人・池田大作

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五、南北格差と教育のあり方  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
5  もし、第三世界のめざす道が自立であるならば、その道は、より広域にわたる、比較的同質の地政学的あるいは地理経済的地域の“集団的な自立”でなければならず、そこでは共通の政策と制度をもち、内部においては労働を分配し、外部世界に対しては統一的立場をとる用意がなければなりません。その反対に、もし現在のように分断されたままで満足のいく発展──この発展という概念にわれわれがいかなる意味を込めたいと願うにしても──ができ、世界の発展のために意義ある参画ができると信じているとすれば、第三世界は、さらに挫折と後退をつづけることでしょう。
 前述しましたように、一九八〇年、国連においてローマ・クラブと、同じく未来を志向する他の二つの研究団体の協力によって、一つの計画(プロジェクト)が発足いたしました。これは、系統的・長期的な協定によって互いに結ばれた有機的国家集合体を作り出すことにより、発展途上国が集団的自立性を強めるためのあらゆる可能な方法を探究し開拓するのを、援助することを目的としたものでした。この研究はきわめて興味をそそるペースで進んでおり、かつては民族国家という古典的な枠組みでしか考えなかった多くの懐疑的な政治学者や政治家も、いまでは、発展途上国がより大規模でより実行可能な単位にまとまることが有利であることを確信するようになっています。
 ここでの私たちの対話は教育から始まり、なお教育を中心に話を進めていますので、私は、このような発展は、教育そのものにも多大な恩恵を与えるものだと申し上げたいのです。しかも、教育はまた、世界の政体を、自治と自立の能力と相互依存的な世界での相互協力の能力とをもつ、たとえば十二もしくは二十の大陸別、地域別、準地域別の共同体へと漸次的に改編する道を開くうえでも、役に立つことができます。教育は、主に若い人びとを対象とするものですが、万人を対象とした集団的事業でもあります。そして、すべての市民が自立と協力の思想を身につけ、生涯維持していく自覚ができたとき、世界家族全体が、より健全な未来に向けて根本的な一歩を踏み出したことになりましょう。
6  池田 「南」の国々の自立化のためには、一国一国が孤立してではなく、集団的にブロックを作って協力し合っていくべきであるというお考えは、まことに重要な点であると思います。自立と、そのために不可欠の内的充実を妨げる最大の障害は、内部抗争であり、隣接する発展途上国同士の争いです。同じ一つの国の中において、部族同士がいがみ合って血を流し合うことなど、愚かという以外にありません。一日も早く国内の争いに終止符を打ち、さらには、同じような条件におかれている発展途上の諸国が協力して国の建設、経済開発、また、なによりも教育にも取り組んでいくということが望まれます。
 とくに教育に関してブロック内協力ということでいえば、私は古くヨーロッパの歴史を振り返ってみると、中世のヨーロッパにおける教育は、まさに、その手本であったといえると思うのです。イタリアのボローニャ大学、フランスのパリ大学、イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ大学、ドイツのハイデルベルク大学等々には、たんにその国の青年だけでなく、ヨーロッパ各地からやってきた学生が学んでいました。
 それぞれの大学によって、どの学科にすぐれた教授がいるかという特色があり、青年たちは国籍によってでなく、学ぼうとする学問によって、めざす教授のもとに集まったわけです。同じことが、今日の途上国の教育についても考えられます。
 そして、このように国境にとらわれない教育のあり方の利点は、次代を担う青年たちに、国境にとらわれない視野を与えることができること、また、こうした大学生活で結ばれた友人たちが、やがてそれぞれの国でリーダーとなったとき、国同士の紛争を未然に防ぎ、さまざまな問題に対処するための話し合いと協力を円滑化する土台となるということです。その意味でも、あなたのご構想に、私は心から賛同するものです。

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