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日蓮大聖人・池田大作

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七、食糧の供給と分配  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
7  ペッチェイ おそらく食糧問題は、各国ないしは各地域が、その可能性に応じて何かを貢献することによって、全人類共有の福利を増大することができ、単独で行うよりもはるかに大きな利益が最終的に獲得できることを示す、一つの良い例となるでしょう。
 しかしながら、われわれの知るところでは、増えつづける人びとのために十分な食糧を生産することのほうが、飢えた人びとの口に食糧を運ぶことよりも、まだ容易のようです。最近の調査によれば、いくつかの地域では、食糧不足が劇的な悪化の方向をたどりそうだということ、その一方では、たとえば北アメリカのような世界の伝統的な穀倉地帯のいくつかは、おそらく現在に比べて面積が縮小するだろうということが明らかにされています。それにしても、最大の問題は、依然として、やはり輸送と配分の問題になるでしょう。つまり、たとえ外国からの食糧供給への依存が認められ、十分な穀物を買うお金や需要国の遠い港まで運搬する手段が得られたとしても、そうして輸入された穀物をその国内でどう輸送し、食糧不足で死に瀕している人びとにこれを運ぶ適切な分配システムをどう組織化するかということが、最大の難問題として残るわけです。
 したがって、数十億の人類の需要を満たすために、食糧を生産することだけではなく、それを運搬し、分配するためには、「東」「西」「南」の広大な地域内および地域間の、国境を超えた広範囲の連帯と協力が不可欠なのです。この基本的な必要を満たすためには、あらゆるレベルでの適正な地域内および地域間の協定、斡旋機関、運営機構、下部組織機関等が世界共同体によって確立され、さまざまに運用されなければなりません。そして、この要求を満たすことこそが、われわれの時代の平和と安定への前提条件となるのです。
8  池田 まことに、おっしゃるとおりです。私が、それぞれの国が自国の人口を養う食糧は自国の手によるべきであるという意味のことを言ったのは、基本的な考え方として申し上げたわけです。現実には、土地が痩せていて食糧生産の不可能な地域もあります。開墾し農地化するよりも、自然のままに残すべき景勝の地や、貴重な生物の生息する森林や平野もあります。
 ただ、間近に日本で行われていることを見て感ずるのは、本来、農業が行われてきた土地が、どんどん宅地化され、工場が建てられているのは、まさに本末転倒ではないかということです。工業地域などは、元来、農業に不向きな、痩せた土地につくられるべきで、農耕可能な沃土は、最大限農地にする必要があります。住宅用地も同様です。
 それぞれの国の中においても、そうした配慮がなされるべきであると同じく、国際的な協力関係・連帯が確立された場合、全地球的規模で分業化が行われるようになるでしょう。しかし、その場合も、そうした配慮が必要ではないでしょうか。いまは工業地帯は温帯地域に広がっていますが、将来は、巨大工業地は砂漠などに建設され、しかも作業はオートメーション化されて、人間の大部分は温暖な自然環境の中で農耕や畜産、また、歴史的な都市の文化遺産を大事にしながら、商業や熟練を要する手作業に携わるようになるかもしれません。

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