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日蓮大聖人・池田大作

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六、人口増大への対策  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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5  ペッチェイ 人口に関する問題ほどさまざまに論議され、しかも結論の出ない問題はありません。私の考えでは、一国家にしても、また世界全体ともなればなおさらのこと、およそ最適の人口水準などというものは存在しないのです。現在生きている世代──すなわち子孫を産む人びと──が自分たちのためにどのような生活水準を望み、また、次代の人びとにどんな生活をさせようとしているのかなど、あまりに多くの要素が絡んでくるからです。
 しかし、必要なことは、人口とそのために基本的に必要とされる食糧、住宅、健康、教育、安全等々との複雑な関係、そしてまた、そうした必要品や必需品が地球的規模ではもちろんのこと、地域的にみても、環境、資源、技術、制度、権力機構等々といかに相互に作用し合うかについても、よりよく知っていくことです。
 また、深く浸み込んだ産児の慣習というものは、文化、価値観、信仰、行動など非常に多くの基本的な側面をはらんでおり、そのため、この慣習を変えることは、必然的に微妙で、長期的かつ困難な仕事になることも覚悟する必要があります。そしてまた、これはさらに繰り返して訴える価値のあることですが、この目的のために案出されるあらゆる方策は、人間の人格への最大限の尊敬心──これから産もうとしている人びと、およびこれから生まれてくる人びとへの尊敬心──から案出されたものでなければなりません。それとともに、現在と未来にわたって個人のみならず全人類がもつ、人間としての権利と義務の複雑な絡み合いも、考慮されなければなりません。
 これらの複合的な要請は、おそらく永遠の道徳的・政治的・社会的な難問を提起するものでしょう。しかし、これらの複雑な要請があるからといって、現今の世界的な難局の中で人びとが自ら採用しあるいは支持している、啓発的で効果的な家族計画や人口政策の必要性が排除されるわけではありません。そしてまた、これらの要請を口実に、どんな種も自らの生存が脅かされうるところまで増殖することはできないという、絶対的な生命の法則が忽せにされてもなりません。
6  池田 正直なところ、この問題については、私自身の心の中にもジレンマを感じないではいられません。たとえば、私の若い知人やあるいは友人の息子夫婦に子供が生まれた場合、それが何人目の子であっても、祝福したいという気持ちを抑えることができません。その一方で、人類全体の人口の急増という問題については憂えざるをえないのですから。
 ともあれ、国家が権力で人口増加を抑制しようとすることは、ご指摘のように、複雑な要素が絡んでいるため、さまざまな問題をひきおこす恐れがあります。子供を何人産むかは人びとの自由意思に任せられるべきでしょう。ただ、人びとが自ら望む以上に妊娠しないですむよう知識と技術を普及させることは、各国政府や種々の機関にもできることですし、弊害を生ずる危険も少ないと考えます。そして、少なくとも、人口の増大を積極的に奨励するような政策は──まだいくつかの国でとられているようですが──廃止されるべきであると考えます。

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