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日蓮大聖人・池田大作

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五、種の絶滅を防ぐために  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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6  さて貴国にとって、基本的に再考を要する問題は捕鯨ですね。そこで、こういうことは考えられないでしょうか。日本もイタリアも、多くの別な面ではともに進歩した国ですが、この二国が模範を示して、互いに相手国の友好的な、かつ厳格な審判者となり、最終的には──たとえば三年以内に──狩猟も捕鯨も中止するという、相互の信義にもとづく公約に同意するのです。
 たしかに、イタリアの狩猟と日本の捕鯨は、伝統的文化に深く根ざした古来の活動であり、多くの人びとがそれによって職を得ております。しかし私は、両国の政府と国民はこのような問題に関しては、より幅広い原則で導かれるべきだと考えるのですが、あなたはそうお思いにはならないでしょうか。両国とも間違いなく、狩猟や捕鯨の中止によって解雇されたり損害を受けたりするすべての人びとに、補償を与えることができるはずです。この二つの関連し合った目標を達成するために、両国共同の運動が開始されるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
7  池田 貴国において、一切の狩猟を禁止しようとの運動が高まっているとのお話は、非常に興味深いものです。同様のことが、日本においても、ぜひ実行されるべきであると私は考えます。
 日本の場合、あとわずか数羽しかいなくなり、文字どおり絶滅の危機に瀕しているトキやコウノトリなどについては、その保存のために力が入れられていますが、一方で、狩猟期になると、多くの野生動物や野鳥が殺されています。時折、人間が流れ弾のために死傷するという事故も起こっています。
 地域によっては、増えすぎたカモシカのために植林が荒らされて被害を受けるとか、イノシシなどのために畑の作物が台無しにされたとかいう事実もあります。そうした地域では、適度な個体数に戻すために、狩猟が要請されるかもしれません。私は、そうしたケースについてまでも、全面的に狩猟を禁ずることはできないと思います。
 しかし、その場合も、柵などによって苗木や作物の保護手段を充実することに力を入れるべきで、野生動物の狩猟は、なるべく避けるべきでしょう。どうしても殺さなければならないとしても、科学的な調査によって個体数を正確に割り出し、殺す数を明確に限定すべきです。また、狩猟者には、射撃の技術とともにモラルを厳格に訓練し、とくに道徳面・性格面で心配のある人には、銃砲の所持・使用を厳しく禁ずるというふうにすべきでしょう。
 捕鯨の問題に関しては、日本は常に国際世論の攻撃に曝されてきました。たしかにそれによって生計を立てている人びとにしてみれば、容易に譲れないという気持ちは私にもわかりますが、やはり、この貴重な海の動物の個体数が少なくなってしまったことは事実であり、その絶滅を防ぐための対策が講じられるべきであると考えます。そして、このために被害を受ける人びとに対して、あなたがおっしゃるように、政府は補償とともに転職への援助を最大にすべきです。

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