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日蓮大聖人・池田大作

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自然との和解  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
5  では、これらの考察から、私たちはどのような結論を引き出さなければならないでしょうか。現状を要約して言えば、人類はすでに現段階で自然を慈しみ、大切にし、全力で守らなければならないことを知るべきであるのに、いまなお権勢欲や浪費ぐせ、気まぐれや貪欲さなどに心を奪われている、ということになりましょう。人間は自然界を荒廃させ、毒し、汚濁させています。自然の心臓部である原生地域を損傷し、その宝の箱を略奪しています。自然力の基本法則を、淘汰や多様化によって侮辱しています。自然のいくつもの生態系を操作し特殊化させることによって、それらをつぎつぎに弱めています。ところが、人間の無分別で身勝手な行動はやがて裏目に出て、その生活の質を低下させ、心身の統一性と適合性を徐々に弱め、そのため人間が現在受け取っている物質的恩恵に対して、あまりにも高価な代償を支払わされるはめになるでしょう。われわれは、そのようなことが果たして起こるのかどうか、またそれがどのようにして起こるのかを知らずに、いま述べたようなことや、その他もろもろのことを行ってきましたが、やっと今日になって、自分たちの行動がいつかは悲惨な結末を招きかねないということが、一部の人間にわかり始めてきました。しかし、それを自覚するだけでは不十分です。必要なのは、このままいけば間違いなく自然と衝突するということ、そして、もし針路を変えなければ惨敗者となる運命にあるということについての、完璧な認識なのです。
6  かくして、たとえそれが物質革命に対する信頼や現代人が構築した進歩・富裕・福祉・文明等の概念を根底から揺るがすことになるとしても、われわれの現在の見解や姿勢を徹底的に再評価しなければならないときがやってきました。人類が未来に向かって安全に、そして心静かに進むためには、思考上・行動上の新たな指針が不可欠です。わけても肝要なのは、つぎのような考察です。それは、人間が自然と和解し直し、自然との調和を取り戻すことに成功しないかぎり、他のいかなる問題にも適正に取り組むことができず、ましてや解決などありえず、いかなる経済的・社会的発展も不可能であり、いかなる計画も非現実的であり、われわれが子孫に受け継がせたいと願ういかなる遺産も有効たりえず、事実、何をやってもそれは永続的なものではありえないということです。自然との和解・調和こそは、人間開発(ヒューマン・デベロップメント)と並んで現代の基本的な絶対必要事項。であり、またこの小さく傷つきやすい惑星上で現代人が強大化した力と比類なき責任をもつ地位にのし上がったことを考えるときに、そこから真っ先に得られる結論の一つでもあるのです。その他のあらゆる考察は、せいぜい補助的なものでしかありえないでしょう。

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