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日蓮大聖人・池田大作

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第十三章 “地球生まれの宇宙…  

「科学と宗教」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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21  池田 大事な指摘です。ここで一つ仏法の話題を取り上げてみたいと思います。
 『法華経』の「宝塔品」では、宇宙のさまざまな国土で法を説いていた、釈尊の分身の諸仏が地球に呼び集められ、釈尊の説法の座に加わります。その後、「嘱累品」にいたって、ふたたび諸仏がそれぞれの国土、つまり他の天体へと帰っていくようすが描かれております。
 ここで、釈尊が説いたものは、“宇宙根源の法”であり、あらゆる生命の尊厳性と平等性にほかなりません。それは地球上だけでなく、宇宙のあらゆる天体・文明に通用する普遍性と永遠性をもったものです。
 その星その星によって、文化も文明も異なります。その“差異”を乗り越える“普遍的精神”を、仏法は与えているということです。それは同時に、地球こそ“選ばれた唯一の星”であるという、地球中心の宇宙観からの脱却をもたらします。
 ログノフ なるほど。あらゆる生命に共通する尊厳性と平等性――これは、重要な意味をもっていると思います。なぜなら、こうした普遍的な哲理をもったものであれば、未来に起こりうる異文明との交流において、精神的、倫理的基盤としての役割を果たすことができるからです。
 池田 さらに、『法華経』の会座で“普遍的なる法”を持った諸仏・菩薩が、今度は宇宙のあらゆる場所で法を説くことを誓います。衆生の“苦悩の闇”を破り、“希望の光”を与えていく菩薩の実践、宇宙に“精神の夜明け”をもたらしゆく菩薩の使命が、ここに厳然と示されているのです。
 ログノフ まさしく『法華経』は、宇宙大のスケールで展開された、壮大な叙事詩といえますね。
 池田 われわれ人間は、この宇宙から生まれました。人類の誕生は、宇宙それ自体の進化の厳然たる成果です。そして、人類は、みずからを生みだした宇宙を認識しつつ、自身の起源と目的、また未来への使命に思いをめぐらす存在でもあります。
22  ログノフ “宇宙の子ども”である人類が、“母なる宇宙”を知的に理解し、飛び立とうとしている。みずからを育んでくれた宇宙に対して、なんらかの貢献をなそうとしている――「宇宙時代」を迎えんとしている人類の現況を、このようにとらえることはできないでしょうか。
 池田 おっしゃるとおりだと思います。恩師の戸田先生は、「宇宙は“仏の姿”そのものであり、“慈悲の行業”そのものである」と述べていました。“母なる宇宙”は無限の時の流れのなかで、物質と生命、そしてわれわれ人類を、“慈愛の心”で育んできました。
 人類は、“母なる宇宙”の慈愛に感謝を込めて、「宇宙文明」の創出につくしゆく責務を負っています。人類がこの宇宙に誕生した究極の意義も、そこにあるといえるのではないでしょうか。
 ログノフ 人類の出現の意義といった問題について、科学は答えることができません。科学が答えられるのは、「宇宙進化」の過程において、“どのように”地球と人類が誕生したかということです。そうした問いに答えるのは、偉大な精神の営為であり、哲学・宗教の分野であるといえるでしょう。
 池田先生の今の発言は、人類誕生の意義という根源的な問題に対する、一つの見事な解答だと思います。
 池田 「宇宙時代」の到来が現実になろうとしている今、新たなる「宇宙文明」を志向するうえからも、仏法が説く菩薩的実践は、深い意義をもってくると思います。
 宇宙論的な使命感に裏打ちされた“地球生まれの宇宙人”が、“母なる宇宙”へ陸続と飛び立っていくとき、二十一世紀は光輝満つるものとなるにちがいないからです。
 ログノフ 私たち科学者も、二十一世紀を起点として、宇宙論的使命を果たしゆくであろう未来の人類に応えるべく、科学技術の発展に全力をかたむけていきたいと思います。
 池田 「宇宙文明」の創出、人類の連帯という大いなる目的意識に支えられて、科学技術の進展も、いちだんと加速されることでしょう。
 科学と宗教が手をたずさえて切り拓く「宇宙文明」こそ、人類の勝利の証であると申し上げ、この対談の結びの言葉にしたいと思います。

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