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日蓮大聖人・池田大作

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第一章 二十一世紀の「科学」…  

「科学と宗教」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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14  ―― 昔から、聖職者が悪事を働くのは変わりませんね。人を救うべき立場で、最も心が卑しいなんて論外です。
 ログノフ どの社会でも、大なり小なり、偽善者の悪との闘争は避けられません。トルストイも「偽善より悪いものはない」と言っています。
 池田 ところで、中世のヨーロッパではダイヤを研磨する技術がなく、宝石としてのダイヤはエメラルドなどよりも価値が低かったようです。上から数えると、十七番目くらいだったという説がありますね。
 ログノフ 天然にとれるダイヤモンドの原石は、半透明なただの小石で、そのままで輝くわけではありません。研磨して初めて燦然と輝くからでしょうか。
 池田 ダイヤは他の宝石と比べて、どうして輝きが違うのでしょうか。
 ログノフ 理想的な角度でカットされたダイヤ(いわゆる“ブリリアント型”など)は、光の屈折率がきわめて高いために、結晶に当たった光が裏側へ抜け出ることなく、内部で反射して、すべて元にもどってくる。そのために、まるで内側から光っているように輝きます。
 さらに、プリズムのように光を分散させる度合いも大きく、あのすばらしい虹色のきらめきを発するのです。
 ―― たとえダイヤは持っていなくても、わが心の宝石を最高に輝かせる人生でありたいですね。
 ログノフ 大事なことは、人間は創造者であるということです。人間は基本的に創造者としての人生を歩むべきだと私は思います。創造するためには、さまざまなことが必要になってきます。
 まず知性が必要です。生まれながらの知性と、さらに精神を磨いていく、育てていく。そうすることによって、仕事をしていく、何かをなしとげていく力が生まれてきます。
 池田 そのとおりです。博士の生き方に裏づけられた力強い言葉です。
 最も尊極な宝石は、自分自身の内奥に秘められている。その生命のダイヤモンドを曇らせる「瞋り」や「貪欲」や「愚癡」という煩悩への執着を断ち切り、「慈悲」と「勇気」と「知恵」の行動へ転じていく。そして自分らしい価値を創造しながら、人間性の輝きを限りなく発光させていく――この「人間」と「社会」と「宇宙」をもつらぬく根本的法則にのっとった人生を、仏法では「自体顕照」といいます。
 さらに大乗仏教の精髄が説く「金剛不壊」とは、「生命の永遠性」を象徴していますが、この点については、またあらためてお話しできればと思います。
 ログノフ ぜひお願いします。
15  未来を開く「生命論」「宇宙論」を
 ―― 最後に、今後取り上げる予定のテーマについて、読者のために、その大まかな項目だけでもお話しいただきたいと思います。
 先日のスペースシャトル「エンデバー」に関する報告が続々と発表されていますので、できれば次章はレポートもまじえながら、このあたりからお願いできればと思います。
 池田 いいですね。宇宙空間は「相対性理論」と「量子力学」の世界ですから、まさに博士の専門領域ですね。一般には難解な、この二つの現代科学の最先端の理論を、宇宙船に乗った気分でうかがいたいですね。(笑い)
 原子などのミクロな世界を支配する基本的な物理法則。マクロな世界で有効なニュートン力学などとは大きな違いがある。
 ログノフ わかりました(笑い)。「物質の究極とは何か」「素粒子の寿命はどれくらいか」といった話題から、「時空論」「宇宙は有限か無限か」といった問題にも取り組んでみましょう。
 ―― 宇宙飛行士たちは、宇宙空間で何を体験し、何を見、何を感じたか。池田先生は何人かの宇宙飛行士と会われておりますし、この点もぜひお願いします。
 池田 わかりました。また、身近なところでは「電気と電波」「光と鏡」といった、やさしい科学も取り上げたいですね。
 「冷蔵庫はなぜ冷えるのか」「電子レンジで温められるのはどうしてか」とか「鏡の原理」といった、日常の科学もお聞きしたい。
 ログノフ いや、じつはこれらのテーマは「量子力学」につながっていく重要な問題なんです。
 池田 アインシュタインの「相対性原理」も、光の速さについての素朴な疑問から生まれたと聞いています。このへんも、博士にわかりやすくお話しいただきたいと思っています。
 ログノフ どこまでご期待に応えられるかわかりませんが……。
 池田 それから、博士の取り組んでこられた「高エネルギー加速器」による研究は、世界的にも最重点の課題になっていますが、そこではどのような研究をされ、何が解明されたのか。
 また、その「ミクロの世界」と「マクロの世界」とがどのような関係にあるのか、量子力学の視点と仏法の視点から、一度論じておくのはどうでしょうか。
 ログノフ 賛成です。
 池田 また、オパーリンをはじめとする生命の発生に関する議論、ダーウィンに代表される進化論や人類の誕生など「生命と精神の領域」についても、博士のお考えをお聞きしたい。
 「恐竜はなぜ滅んだのか」とか、「人類を超える知的生物は存在するか」などの興味深いテーマも取り上げましょう。
 ログノフ この分野は、私の専門ではないものですから、この機会にしっかり勉強してみるつもりです。
 池田 心の領域というと、大脳生理学の分野ですが、ここでは「夢と睡眠」、それから先ほど出ました「記憶の問題」がありますね。具体的には、「頭のよくなる薬はあるか」とか(笑い)、「睡眠はどれくらいとればよいのか」とか、「夢はなぜ見るのか」についても、どうでしょうか。
 ログノフ いいですね。それから、生命の本質といわれる「遺伝子」も取り上げましょう。
 池田 生物学のテーマですね。私も仏法者として、できるかぎり思索を深めておきます。
 ログノフ 精神の分野に入ったところで、今度は、池田先生に本格的な「宗教論」をうかがいたいと思います。
 池田 歴史上、科学と宗教はさまざまな関わり方をしてきました。周知のように、西洋近代科学の誕生には、キリスト教とイスラム教が深く関わっております。また、インドや中国の科学にも、仏教をはじめとする東洋の宗教が貢献しております。
 ログノフ 池田先生には、人類史における「宗教」と「科学」の“相互関連”を踏まえて、いよいよ未来の人類のための「宗教論」「科学論」を展開していただきたいのです。とくに、「仏教」は未来の科学にどのように貢献するのかについて、おうかがいしたいと思います。
 池田 「生とは」「死とは」また「生命とは何か」、そして「永遠の生命」という宗教の根本的テーマについても語り合いましょう。仏法に説く「生命論」「宇宙論」こそ、ダイヤのごとき英知の光源といってよいと思います。
 ―― たいへん楽しみな、示唆に富む対談になりそうで、胸がわくわくする思いです。

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